研究実績の概要 |
1. 研究目的 : 日本人高校生を対象に論理性に着目した英作文指導を行うため, 書き手の主張を支える「理由・裏付け」に対するフィードバック(FD)に着目し, 学習者の「主張・理由を組む力」の育成に効果的な指導法(思考ツール開発)を検証する。 2. 研究方法 : 3つの研究課題(RQ1 : FDの種類と論理性意識の関係, RQ2 : FDの種類と主張・理由を組む力/作文の論理性との関係, RQ3 : 3種の活動への印象)を設定, 以下の調査を実施。 (1) 協力者を3群(自己チェック・指導者FD・ピアFD)に分割, 1週間に1回, 3週間に渡り, 群別に開発したタスクシートを用いた活動を実施。 (2) 事前・事後の英作文テスト得点及び論理性意識に関する自己評価得点, 事後の各FDに対する自由記述データの収集及び処理。対照群(タスクシートなし)の得点は増見(2015)で活動前後に有意な変化がないことを確認済。 3. 研究結果 (1) RQ1 : 他者からのFDが論理性意識の向上に有効であることを確認(指導者>ピア)。 (2) RQ2 : 作文論理性の伸びでは, ピア(効果量大)>自己≒指導者(効果量小)を確認。 (3) RQ3 : 各活動への印象の違いが, 論理性意識及び作文の論理性に影響を与えた可能性を確認。 4. 本研究の教育現場への活用(意義) (1) 短期間での効果 : 3週間程度の短期でも, 論理性意識や作文の論理性の向上に, 指導者及びピアFDによる効果が得られた。本実践で開発したタスクシートを用いつつ, こうしたFDを積極的に指導に取り入れることの意義があると考えられる。 (2) 指導法の組合せ : 指導者FDの負担(学習者1人につき約15分程度(授業内)), また「指導者による修正は役立ち, 論理性意識は高まるが, 書く際に指導者からのコメントを意識して躊躇する傾向」の結果から, 指導者FDの適度な介入に加え, ピアFD中心の指導が相対的に有効と考えられる。 (3) 意義 : 指導実践を考慮した本研究は, 次期学習指導要領にて新設される科目「論理・表現」に先駆けた教育実践として意義と価値を持つと考える。
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