研究実績の概要 |
1. 研究目的 世界では, グローバル化が加速, 産業構造が変化, 第4次産業革命などの技術革新により求められる技術者の能力に変化が見られるようになってきた。普通教育で行われるものづくり教育も従来型の技能重視の学習では新たな時代に必要とされる人材を育成することができない。そこで, 着目したのがイノベーションである。新たな価値を創造し, 社会に変革をもたらす製品開発の思考過程をものづくり教育に取り入れることによりこれからの時代を担っていく人材が育成できる。その製品開発の過程が工学設計, すなわちエンジニアリングデザインである。このエンジニアリングデザインの思考プロセスを普通教育に適用させることが目的である。 2. 研究方法 エンジニアリングデザインの思考や作業のプロセスを普通教育に適用するために, 質問紙調査を行い, 先行研究におけるエンジニアとテクニシャンの思考や作業のプロセスの比較をもとに, 中学生の思考傾向を調べた。また, エンジニアリングデザインの過程においてプロトタイプ製作を取り入れることにより, どのような資質・能力が身につくのかを明らかにした。 3. 研究成果 中学生のものづくりにおける思考プロセスを調査した結果, エンジニア的傾向を示した内容は, 科学的, 論理的, データ重視, 図面・仕様書, 柔軟, 発展的の6つ, テクニシャン的傾向を示した内容は, 個別対応, 身体の中にある, 固定した枠組みの3つであることがわかった。テクニシャンの教育は, 伝統的な技術の伝承には適しているが, 普通教育の中で行われる技術科教育としては, エンジニア的プロセスが適している。また, プロトタイプ製作を重視した「金属パイプを利用した自立式ハンモックの製作」の授業を行い, プロトタイプ製作を体験していない生徒と質問紙調査を行い比較した。その結果, プロトタイプ製作を体験した生徒は, 構造や強度を模型で確かめることができる, 寸法を確認できる, 材料を無駄なく使うことができる, 実物の形をイメージしやすくなる、の4点について効果が明らかとなった。
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