研究実績の概要 |
1. 研究目的 神戸は南に大阪湾, 北に六甲山地をかかえ, 晴天静穏日には熱的局地循環である海陸風・山谷風が発達する(瀧本, 2014). 六甲山地の山風と気温との相互作用については, 竹林ほか(2001)が夏季を対象として調査を行い, 山地の谷において冷気が集積し, それが流出することによって市街地の気温低下効果が山際からlkm程度までの範囲において期待できることを示唆している. そして, 竹林・森山(2002)では, 冷気流が最大で2℃程度低温であることを示している. しかし, 六甲山地からの冷気流だけでなく山風自体の実態把握についてもまだ十分研究されているとはいえない状況にある. そこで, 本研究では大きく以下の2点を目的とした. (1) 六甲山地中腹において時間解像度の高い風向・風速の定点観測を実施し, 六甲山地からの山風の実態を調査する. (2) 風向・風速とともに気温の観測も実施し, 山風による気温への影響を評価する. 2. 研究方法 (1) 六甲山地の中腹に風向・風速計, 気温測定器を設置し観測(時間解像度 : 1分)を実施する. (2) 暖候期晴天静穏日における山風の平均的な挙動をコンポジット解析により明らかにする. (3) 風向・風速の変化と気温の変化の関係について調査し, 山風の気温への影響を評価する. 3. 研究成果 (1) 六甲山地中腹においては, 15時以降北寄りの風が定常的に吹き始め, 気温は急激に4~5℃低下する. (2) 冷気流の吹送時間は15~07時であり, その風速は約1~2m/sである. (3) 冷気流とヒートアイランドの両方の影響を受けた結果, 六甲山地中腹と神戸市街地の気温日変化には差異がみられる. (4) 神戸市街地周辺では14~18時の間に広域海風が卓越するが, 六甲山地中腹では15時から冷気流が発生する. 六甲山地中腹では, 15時以降に神戸市街地と異なった局地循環が形成される.
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