国内の植物園におけるアンボレラの栽培状況を把握し、安定した栽培方法の確立と人工授粉による種子の確保を目的として研究を行った。 【1】栽培状況を把握するため、当園から分譲を受けた施設に対して、アンケート調査を行った。延べ9回6施設に分譲の記録があり、3施設から回答を得た。3施設で再分譲が行われ、生存個体を有する2施設のうち、栽培年数が2年を超える施設では状態が芳しくなかった。安定的に維持している施設はまだなく、今後も改善を進める必要がある。別に京都大学が入手した実生個体が存在することがわかり、情報共有をしていく予定である。 【2】生育状態が低下する夏季の栽培場所として、3箇所設定し、比較を行った。試験区毎に環境計測を行い、生育の評価は、見た目の他にクロロフィル蛍光測定器を購入し、光合成効率の数値(QY値)を測定することによって判断した。結果として、枯死数や良好な個体の数はほぼ同数で、有意な差は見られなかった。試験個体が、実生であったため、個体差が大きく比較に不向きだったと考えられる。また、枯死は移動後、早い段階で見られたため、環境の影響より植替えのダメージの可能性が高く、植替え方法の改善が必要である。QY値の測定により、光条件について、想定より弱い光(直射の10~20%)が適する個体が多いことがわかった。 【3】種子の保存可能な期間を調査するため、発芽試験を行ったが、成熟状態や保存期間、保存温度にかかわらず、発芽が観られていない状況である。核果の通常の方法として、果肉除去後、乾燥保存をしていたが、見直す必要がある。人工授粉は、雌の開花株が1株のみで、雌雄の開花のタイミングがずれたが、2回実行した。最終的に成熟には至らなかったが、子房が膨らみ3ヶ月近く発達した果実が複数みられた。人工授粉を成功させるためには、雌の受粉可能な時期の特定と果実の発達が止まる原因を回避することが重要である。
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