研究実績の概要 |
研究目的 : 阿蘇地域は夏季冷涼な気候を利用した施設野菜や豊富な地下水による稲作が主要な農業生産品目となっている. しかし, 平成28年に発生した熊本地震の被害により, これまでの営農活動が出来ない農家も存在する. 地域の早期復興を目指すために農業の復興は基盤となる課題である. 水稲育苗とブドウ栽培が並行して行える『水稲育苗ハウスを利用したブドウのアーチ栽培技術』は震災により被災した稲作農家でも取り組み易く, かつ圃場機能が回復した後の副収入として稲作農家の収入増加に繋がる技術と考えられる, 一方で, 阿蘇地域の気候は多雨で夏季の日照時間が短いなど北陸地域とは栽培環境が大きく異なる. そこで, 数品種を用いて阿蘇地域における本栽培技術および品種適性を評価した. 研究方法 : 供試樹には, 本学水稲育苗ハウスに植栽した3年生の‘オリエンタルスター’, ‘サニードルチェ’, ‘雄宝’(いずれもテレキ5BB台)および‘ブラジル’(無毛テレキ台)の4品種各4株を用いた. また, 水稲品種には‘もりのくまさん’を用いた. ブドウ栽培については, いずれも短梢剪定無核栽培を実施し, 各品種の生育相, 収穫期および果実品質を常法により調査し, 品種ごとの栽培暦を作成した. また, 果実品質については, 各株3房から各5粒を無作為に採取し, 縦径・横径・果粒重・糖度について調査した. 水稲栽培については, ブドウとともに水稲育苗ハウス内で育苗した苗と通常育苗した苗を同一水田に植え, 葉齢, 草丈および茎数について毎週調査を行い, 収穫期には30株の穂数, 全体重, 籾重および精玄米重について調査を行った. 研究成果 : 阿蘇地域においても水稲育苗ハウス内でのブドウ栽培は稲の収量に影響を及ぼすことなく, 可能であることが明らかとなった. また, 供試した4品種のうち, ‘オリエンタルスター’は裂果も少なく, 糖度も十分であることから阿蘇地域に適した品種であると考えられる.
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