研究課題
【研究の目的】炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease(IBD))の治療薬として、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤は寛解導入療法から寛解維持療法まで幅広く使用されている。抗体医薬は体内において抗薬物抗体(ADA)が産生され抗体医薬の極端な血中濃度低下を引き起こすことが報告されており(BaertF, NEJM, 2003)、体内動態の個体内・個体間変動が効果発現の差に寄与することが示唆される。本研究では、IBD患者におけるIFXの個体内・個体間変動とその影響因子を明らかにし、IFX、ADAの血中濃度とIBD治療効果について相関解析を実施し、IBD治療における抗体医薬の適正使用について検討した。【研究方法及び成果】1. ADA濃度測定 : Somru Bioscience社のELISA Kitを用いて測定を実施し、88検体中6検体においてADAを検出した。ADA検出群におけるELISA法によるIFX平均血中濃度は、ADA非検出群におけるIFX平均血中濃度と比較し、低値であった。2. TNFα濃度測定 : R&D Systems社のELISA Kitを用いて、測定を実施した。TNFα高値症例ではCRP値が高い傾向を認めた。3. 治療効果に関するデータの収集および治療効果と血中濃度との相関解析 : CRPについて電子カルテを調査し、IFX、ADA、TNFα血中濃度測定結果とIBD活動性との関連性について検討した。IFX血中濃度高値かつTNFα血中濃度低値である場合において、IBD活動の指標であるCRP値は低値であった。IBD患者においてIFX血中濃度測定は有用であり、またTNFαは、IFX治療の効果の指標として有用である可能性が示唆された。
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