研究目的 : ネダプラチンは腎排泄型の薬剤であることから、腎機能低下時にはAUCが上昇し、骨髄抑制の発現頻度上昇や重篤化が起こることが想定される。しかしネダプラチンの腎機能低下時における明確な減量・中止基準は無く、臨床現場では腎機能低下患者においても減量されることなく投与されるケースが散見される。本研究は、腎機能低下患者におけるネダプラチンの骨髄抑制発現頻度を調査し、減量水準を設定するためのデータを収集、解析することを目的として行った。 研究方法 : 2013年9月から2017年8月までに、京都大学医学部附属病院産科婦人科においてネダプラチン/イリノテカンの併用によるがん化学療法を受けた子宮頸癌患者における副作用発現頻度を電子カルテより情報を収集し、調査・解析を行った。症例をCockcroft-Gault式より算出したクレアチニンクリアランスを基に腎機能を層別化し、各群における骨髄抑制発現頻度を調査した。 研究結果 : 現時点で約100症例の子宮頸癌患者を対象とした調査をレトロスペクティブに行い、40症例のデータ収集、解析を終了している。治療開始時において推定クレアチニンクリアランス(以下、推定Ccr)が30mL/min未満の患者においては推定Ccrが60mL/min以上の患者と比較して、血小板減少の発現頻度が有意に高い結果が得られた。なお、レトロスペクティブな調査は現在も継続して実施している。 今後は、医の倫理委員会からの承認を得て、患者におけるネダプラチン血中濃度測定を開始し、腎機能低下時におけるネダプラチンの血中濃度の変動について検討を行い、さらに各群における骨髄抑制発現頻度を合わせて考察することで、ネダプラチンの腎機能低下時における減量・中止基準について提言することを目指す。
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