神経内科病棟に入院する患者の多くは高齢であり、複数疾患を合併しているため薬剤性有害事象の発現リスクが高い。本研究では神経内科病棟に入院した高齢患者を対象に薬剤性有害事象(ADR)の発現状況およびADRの入院期間に及ぼす影響を検討した。 対象は4年間に岐阜大学医学部附属病院神経内科病棟に薬物療法のために入院した65歳以上の患者とした。対象となったのはmRS3-5と中程度以上のADLの低下が見られる患者のみであった。28%の患者にgrade2以上の薬剤性有害事象が発現しており、Grade2以上の薬剤性有害事象が発現した患者は有意に入院期間が延長していた。mRSの高い患者は入院期間が伸びる傾向があるものの、同じmRSスコアの患者群で比較した際でも薬剤性有害事象が入院延長の独立したリスクであることが確認された。 また、grade2以上の薬剤性有害事象を起こす独立したリスク薬剤として、副腎皮質ステロイド剤、抗菌薬、経腸栄養剤、インスリン製剤が見いだされた。これら4剤の併用数が増えると、薬剤性有害事象の発現率は著しく増加し、入院期間も有意に延長することがわかった。一方、リスクを有していない薬剤については、併用数が増えるにつれて薬剤性有害事象は増加したものの前者ほど有害事象の発生率が上昇しなかった。また、入院期間との間には有意な相関はなかった。 神経内科病棟の高齢患者において、副腎皮質ステロイド剤、抗菌薬、経腸栄養剤、インスリン製剤が含まれるポリファーマシーは、薬剤性有害事象の発現および入院期間延長のリスク要因となっていた。これらの薬剤は、治療上必要であり減薬することが困難であることから、適切な支持療法を実施する必要がある。したがって、ポリファーマシーを考える上では、優先的に対策を実施すべきリスク薬剤を抽出するとともに、薬剤の種類により支持療法や減薬等の対策を考慮する必要があると考えられた。
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