研究実績の概要 |
○研究目的 : 質の悪い睡眠は、生活習慣病の罹患リスクを高める。一方で、自律神経活動や睡眠状態が健常者と同様である認知症患者は、日常生活の活動性とコミュニケーションカが保たれていると報告されている(Fuji et al., 2016)。慢性疾患を持ちながらも地域で元気に生活している高齢者の生活状況や考え方について明らかにすれば、子ども達が幼少期から自分自身の身体に目を向け、健康寿命を延ばし、その人らしく過ごすことができるヒントが得られると推測した。本研究の目的は、地域在住の高齢者の生活歴、睡眠の質および自律神経活動の関係性を明らかにすることであった。 ○研究方法 : (1)慢性疾患がありA病院に通院している中年後期・老年期161名を対象に、質問紙調査を行った。(2)その中から睡眠の質が良く精神的健康関連QOLが高い66名のうち9名を対象に、半構成化面接調査を行い、慢性疾患を持ちながらもその人らしく生活している秘訣やこれまでの過ごし方、人生観などについて、特徴的であった1名の語りを分析した。 ○研究成果 : (1)睡眠の質が悪いリスク要因は、がんの既往があることであった。がんの既往がある患者の疾患管理だけでなく、睡眠状態の把握や睡眠状態の改善にむけた継続的な関わりが重要である。質の悪い睡眠の予防要因は、体の年齢を若いと捉えていること、身体的な健康関連QOL低下の予防要因は、気持ちの年齢を若いと捉えていることであった。(2)面接調査では、病気を契機に、生活を振り返り、生活習慣の改善を試み、前向きに努力し、新しい楽しみや考え方を取り入れるように心がけていた。高齢者の思いや考えを語る場が必要であり、子どもやその保護者達が聞くことで、現在の生活スタイルの見直し、今後の過ごし方を考える契機となることが示唆された。
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