研究課題
研究代表者の上野は、ここ数年の間にデータ同化システムにおける正則化パラメータの最適化手法を開発し、大規模なシステムを対象とするデータ同化システムのパラメータ調整作業に解決策を与えた。データ同化システムにおいて、物理モデルと観測データそれぞれの重みを表すノイズの分散共分散行列の調整は必須であるが、一連の研究成果により、大規模なシステムを対象とするため膨大になりうるパラメータ調整作業に解決策を与えたものである。本応募課題は、物理モデルと観測データの関係において開発してきたこれらの研究成果を発展させ、結合システムを構成する各領域の物理モデル同士の関係に導入するものである。結合領域間の相互作用を統計的にモデル化し、そのパラメータを同成果を用いて最適化することにより、従来は困難であった時間スケールが異なる各領域の状態の同時推定が可能になることが期待できる。平成29年度は以下の研究を進めた。(1) 中程度の複雑度の結合モデルをもとに、結合過程を表す統計モデル(弱結合モデル)の開発を進め、弱結合データ同化システムのプロトタイプを作成した。(2)弱結合同化システムの高度化のために、そのコンポネントとなる全球海洋4次元変分法データ同化システムの開発を行った。また、既存の大気海洋結合モデルを用いた予測結果を解析した。(3) 電離圏-リングカレント-プラズマ圏モデルと放射線帯モデルを結合し、ジオスペース結合モデルの開発を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)既存の弱結合同化システムを用いた、結合同化からの大気海洋結合モデルによる短期結合予測実験の結果について解析したところ、対流圏下層について、気象庁の現業で用いられている大気モデルの解像度を結合モデルと同程度に落としたものと比べて、良い予報精度を持つことを確認した。(2)上記システムで結合再解析、および、海洋から大気への海面水温データを受け渡す代わりに、観測海面水温を与えた非結合再解析を実施しその結果を解析したところ、結合再解析には非結合再解析と比べて降水量の分布や熱帯の降水量と海面水温のラグ相関関係の再現性に優位性が見られることを確認した。(3)上記の再解析を予報初期値とした一ヶ月結合予測実験を実施し、非結合再解析からの予測実験の結果と比較したところ、極域で予報の改善が見られることを確認した。
(1) 各領域の効果の結合により表現された観測モデル(結合観測モデル)を開発する。(2) 大気・海洋・海氷結合同化システムの開発を継続する。(3) ジオスペース結合モデルに観測モデルを統合し、ジオスペース結合同化システムを開発する。
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計測と制御
巻: 56 ページ: 656~661
https://doi.org/10.11499/sicejl.56.656