研究課題
システムは実世界で起こる多様な環境変化にさらされる.実行中における実世界の環境変化にも迅速かつ柔軟に耐え,可用性,応答性,セキュリティ,頑健性といった多種多様な品質を維持するには,実行時の情報を活用した自動運用が不可欠となる.自動運用可能なソフトウェアの開発支援のために,開発時に使われるモデルを実行時にも保持し,実行中の情報を反映したモデル上でシステム構成変更を決定する実行時モデリング技術が発展してきている.しかし従来の実行時モデルフレームワークは単一観点のモデルしか扱えず,多種多様な品質を同時に維持することができなかった.そこで本研究では,複数の観点のモデルを協調して扱う実行時モデリング技術を確立し,実行中の環境変化に対して複数の品質維持を可能とするフレームワークを開発する.平成30年度は,2つの品質観点を対象として2つのビューモデル協調のためのフレームワークを試作し,評価実験を行った.具体的には,開発したフレームワークを用いてクラウドベースWebアプリケーションを構築し,実行時の変化に対する品質維持性能を評価した.また,その結果を踏まえて,要素技術である[実施項目1]実行時モデルによるシステム管理技術と[実施項目2]協調プランニング技術を,3つ以上の品質を扱えるNビュー対応に拡張するよう洗練化を行った.これらの要素技術洗練化は当初は平成30年度内に行う予定であったが,要素技術のさらなる洗練化のために当初の計画より1ヶ月延期し,平成31年4月までとなるよう計画変更を行った.その変更された計画に従い,実施項目3は平成31年4月に要素技術の洗練化を完了した.
2: おおむね順調に進展している
平成31年1月,Nビュー協調自己適応技術に関する議論をソフトウェア工学分野の著名研究者と行った.その結果得られた手法改善のための有益なコメントに基づき手法の改善を行わなければ十分な品質改善が望めず研究目 的を達成できないため,2ビュー協調自己適応技術構築を延長する必要が生じ,当初の2019年3月より1ヶ月延長し,2019年4月まで行うこととした.計画は変更となったが,計画変更により要素技術の洗練化という当初の大きな目標は達成できており,概ね順調に研究は進展している.
平成31年度は,洗練化した要素技術を反映したフレームワークの改良と,複数品質の維持を確認するための評価実験を行う予定である.
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