研究課題
分子通信とは、化学信号や化学反応を利用したバイオナノマシンのための通信方式であり、近年、情報通信分野において、新しい通信技術として注目を集めている。本研究では、様々な分子通信方式の設計や性能評価、および、応用設計や概念実証を行い、分子通信を通信の技術として確立することを目標としている。また、国際研究グループを形成して、分子通信方式の国際標準を策定することも目指している。前年度までの研究により、分子通信のナノ医療への応用と実証実験が大きく前進した。具体的には、がん細胞集団が細胞間の相互作用を介して網構造を形成する仕組みの理解が進んだ。4年目となる令和2年度には、ヒト脳腫瘍細胞株を用いて、ヒト脳腫瘍細胞の集団が網構造を形成する仕組みを理解することを目指して研究を進めた。具体的には、タイムラプス動画の分析、シミュレーションモデルの構築、数値実験による実験結果の再現を行なった。その結果、がん細胞集団が移動と増殖を切り替えながら大規模な構造を形成していく過程を計算機上に再現することに成功した。また、シミュレーション実験によって、細胞集団による構造形成を阻害し、細胞の増殖を抑えることができる条件を調べた。構築したモデルは、今後がんの治療方法を検討していく際に有用になると考えられる。本研究の成果をまとめた論文は、IEEEが主催する国際会議 (IEEE GLOBAL COMMUNICATIONS CONFERENCE 2020) において最優秀論文に選ばれた。また、分子通信の医療応用に関する論文を執筆し、国際学術雑誌 (IEEE Transactions on Molecular, Biological and Multiscale Communications)において発表した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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IEEE TRANSACTIONS ON MOLECULAR, BIOLOGICAL, AND MULTI-SCALE COMMUNICATIONS
巻: 8 ページ: 28-35
10.1109/TMBMC.2021.3083725