研究課題/領域番号 |
17H00734
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
戸出 英樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20243181)
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研究分担者 |
廣田 悠介 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (20533136)
藤本 章宏 和歌山大学, 学術情報センター, 助教 (30711551)
谷川 陽祐 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90548497)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クラウドコンピューティング / ビッグデータ / ネットワーク制御 / 空間分割多重網 / エラスティック光網 / 光パス設定制御 / クロストーク |
研究実績の概要 |
(ア)SDM-EONネットワーク設計技術 の実績として、まずSDM-EON環境で、特定周波数スロットに対する「クロストーク(XT)禁止領域」の概念の導入によりクロストークによる信号劣化を新規パス+既設定パスの双方に対して厳密に考慮に入れつつ、Best-EffortXTの概念に基づき隣接コアの周波数利用率も考慮に入れた拡張提案手法を各種テーブル管理も含めて設計し、定量評価の結果、先行提案方式を上回る性能改善効果が実証された。次に、新たな切り口の研究として、XTに関する「ノード内干渉度」を新たに定義し、この指標をコスト化して制約条件とすることで、各ノード内のXTのインパクトを目標制限値以下に抑制しつつファイバ内XTによる信号劣化も同時に抑制できる手法を提案・設計し、その有効性をシミュレーション評価により基本検証した。次に、伝送リーチやXTの制約を克服するために再生器の導入法を提案し,再生器による信号回復を組み込んだ手法を基本設計した。さらに、複数の等価なオブジェクトが存在する場合のRSCMA手法について、変調方式と関連した伝送リーチ、XT劣化制約、フラグメンテーションを同時に加味することのできる手法を基本設計した。 (イ)制約の異なる複数オブジェクト検索+移動・複製・網構成変更 の実績として、まず、RSCMA制御と「VNF・計算資源・コンテンツ」など対象オブジェクトの移動・複製制御とを関連付ける方式として、CDNにおけるコンテンツ取得・複製と光パス設計とを融合させた方式を提案・評価した。次に、VNFの系列からなるサービスチェインを自律分散的に発見し、かつ、必要に応じて適切なVNFを起動・終了させることで、移動・複製の機能をも提供するフレームワークを提案・設計した。ビッグデータ解析のためのアメーバネットワークと計算機資源の割当との連携手法の詳細設計ならびに評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(ア)のSDM-EON ネットワーク設計技術、課題(イ)の制約の異なる複数オブジェクト検索+移動・複製・網構成変更技術共に、個別課題の計画に対する変動は多少あるものの、核となる研究は予定どおり進捗しており、その一方で方式の完成度や成果面で計画を上回る部分もあり、総合的には、計画はおおむね順調に進んでいると判断される。具体的には、課題(ア)に関して、広帯域デマンド収容やTransmission ReachやXTの制約を克服するために再生器の導入法については、年度内の追加学会発表は行えていないが、特に再生器の導入法については、提案・評価も完了し、次年度論文誌投稿のめどが立っている。一方、クロストークの抑制に関しては、より緻密な提案と評価が行えており、年度末にIEEE/OSA国際論文誌に投稿し査読待ちである。なお、この課題に関しては既に目標の従来方式に対する10倍の性能改善のめども立っている。一方、課題(イ)に関しては、分散クラウドやEdge-Computing環境、分散CDN環境などを想定して光パス設計との連携を図る研究が順調に進捗している。分散サービスチェイン検索手法に関してはIEICE論文誌に採択された。SDM-EON環境への適合に関しては一部の手法で進捗しているが、さらに他の提案手法でも積極的に推進する予定である。計算資源の動的な割当を光ネットワーク設計と連携して行う技術(計算資源のマイグレーションを含む)の成果をIEEE論文誌に投稿した結果、残念ながら不採択となったため、さらなる改良・評価を検討する予定である。前年度に続き、NICT仙台テストベッドを用いた基礎実験として、動的なパスオフローディングと擬似的なマルチコアファイバ環境を想定したパス切替の動作検証を行った。これにより、SDN系の研究を今後実証実験につなげるための土台が構築された。
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今後の研究の推進方策 |
できる限りインパクトのある成果をあげつつ最終目標を達成するため、柔軟に研究を推進する。特に、SDM-EON環境の制約を考慮に入れた提案方式の拡張を引き続き進める。 課題(ア)SDM-EONネットワーク設計技術については、まず、Best-Effort XT+ Strict and Simple XT + RSCMA + Routingの融合問題に対して拡張を進め、成果発表につなげる。また、ファイバ&ノードXTの考慮に関して、今年度基本提案した方式に対し、特に、ノード内XTの出力ポートへの影響範囲が限定される環境下での方式拡張を進める。さらにサーベイを進め、周波数スロット軸への影響考慮など、ノード内XTをより定量的にモデル化し、新たな方式提案を行う。なお、課題(ア)全体を通して、機械学習を取り入れた方式拡張や要求品質クラスに応じた適応制御についても積極的な検討を行う。 一方、課題(イ)多数のノード集合を連携するSDM-EON光ネットワーキング応用技術については、まず、距離・変調方式・コア・XT・経路を考慮に入れた複合経路設定手法の確立に対して、テーブル管理ベースで複数の制約を同時に加味したSDM-EON光パス設手法を確立する。SDM-EONに亘るCDN環境におけるコンテンツ移動複製・取得制御手法に関して、本年度提案した基本方式をベースに、CDNのサロゲートエッジ間をSDM-EONで接続する環境を想定し、コンテンツの取得・複製・光パス設定を行う手法を確立する。また、自律分散的にサービス機能や計算機資源と経路の組を決定する手法についても拡張提案を検討する。RSCMA制御コア部の実証実験に関して、制御部を含めた経路切替え、マルチコアファイバを想定した擬似的な経路切り替えについての基本実証実験などをさらに進める。
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