研究課題/領域番号 |
17H00737
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
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研究分担者 |
清木 康 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (10169956)
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
猩々 英紀 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60284626)
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
豊浦 正広 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80550780)
竹島 由里子 東京工科大学, メディア学部, 教授 (20313398)
杉浦 篤志 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (90755480)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算法科学 / 構造化文書 / 出自管理 / 分析可視化 / 意味の数学モデル |
研究実績の概要 |
初年度である今年度は当初の計画どおり,本研究に参加する4機関6部局9名の研究者を,構造化文書処理(D),法科学評価(F),出自管理(P),分析可視化(V)の4グループに編成して研究を実施した.今年度得られた研究成果は以下の通り要約できる. 【Dグループ&Fグループ】LMML基本処理系のリファクタリングと実評価:先行研究で開発したLMMLオーサリングツール・ブラウザ等の基本処理系の大幅なリファクタリングを実行し,より直観的かつ対話的な司法解剖データの入力・閲覧が可能になった.さらに,山梨大学医学部法医学教室での数例の解剖の実データ入力を試験的に実施し,その実利効果を検証した.遺体損傷の態様の多様性に対応できるように細部のシステム要求仕様の改良を重ね,次年度以降のより包括的な機能拡張に耐えられるレベルに到達した. 【Dグループ&Pグループ】LMML文書の意味解析:既存の画像コンテンツ類似検索応用の記述例を参考にして,拡張されたLMML言語のタグ情報や埋め込まれるべき各種メディアデータの特徴を基底にとり,個々のLMML文書に記述される事案を特徴づける多次元特徴ベクトル空間定義とその意味解析の基本的検討を開始した. 【Vグループ】分析可視化の基本要素技術拡充:人体のマルチスコピック解析を構成する,想像顔(似顔絵)の自動生成,準解剖学的人体構造モデリングとそのGPU高速化,血液・組織の生化学的検査,DNA/RNA解析に加えて,事案の証拠となる,歩行軌跡,各種流動現象,毛髪・布地等のグラフィカルモデリングとその定量的特徴解析,さらに,表示環境の高度化に資する,医療関連コンテンツのビデオモニタリングやオートフレーミング,AR表示に関する基本要素技術開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始後に,研究分担を御願いしている山梨大学医学部法医学教室からは,司法解剖に伴う遺体の実CTデータが入手できないことが分かり,損傷生成に関する仮説の対話的な検証を支援する客観的なエビデンスの不足が深刻な問題として浮上した. 複数の大学の法医学教室や地方公共団体の病院に同種のデータ入手の可能性を打診したところ,2017年12月になり,ようやく千葉大学医学部法医学教室に協力を要請できることになった.しかし,これまでの山梨大学医学部法医学教室とは,司法解剖の術式や記録の方式に少なくない差異が存在する事実も同時に判明し,予期しなかった計算法科学オントロジーや拡張LMMLのスキーマ定義の修正が必要になった. そのため,計算法科学ライフサイクル全体に管理対象を拡大するうえで必須となる,捜査資料や臨床情報,ソーシャル情報等の他文書データやそこに用いられる分析可視化タスクの実態を分析し,LMML仕様拡張に含める計画は次年度以降に譲らざるを得なくなった.
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今後の研究の推進方策 |
千葉大学医学部法医学教室から遺体の司法解剖および実CTデータを入手し,本研究に利用するには,千葉大学大学院医学研究院が現在東京大学大学院医学研究科との間で締結している包括連携研究協定を,慶應義塾大学および山梨大学も含まれるように拡大した後,本共同研究の研究倫理審査を受理してもらう必要がある.次年度前半内には本件を達成したい. その後,実際に得られる解剖所見・遺体データを精査し,計算法科学オントロジーや拡張LMMLのスキーマ定義を拡張し,既存のLMMLオーサリング・ブラウジング環境の機能拡充につなげる.なお,損傷の位置やサイズの同定に貢献する人体の特徴点データベース構築については,茨城県警が監修する法医解剖用語集に記載されている特徴点リストが最も包括的であり,その設計の基本に据えるべきである点を既に確認している. CTイメージングの基本は,CT計測装置にバンドルされている商用ソフトウェアに委ねられるが,LMMLブラウザと連動する対話的な視覚分析環境には,新たな可視化パラダイムの導入が必要である.幸い,研究代表者の研究室にベルギー・ブリュッセル自由大学から医学修士号を取得し,博士後期課程に進学してきた医師免許取得者が在籍することになり,医学の専門家の立場から研究協力者としてこの副テーマに専心してもらう体制が整ったところであり,次年度から本格的にシステム拡張の要求仕様策定を開始できる予定である.
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