研究課題/領域番号 |
17H00737
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
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研究分担者 |
清木 康 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (10169956)
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
竹島 由里子 東京工科大学, メディア学部, 教授 (20313398)
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
猩々 英紀 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60284626)
豊浦 正広 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80550780)
杉浦 篤志 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (90755480)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算法科学 / 構造化文書 / 出自管理 / 分析可視化 |
研究実績の概要 |
今年度の主要な実績は以下の三点に集約できる. ①これまで開発済の法医学マークアップ言語LMMLブラウザとネットワーク越しに連動可能な専用ビューワを,可視化ツールキットvtkの関数を利用することにより開発した.LMMLリポジトリから案件ファイルを入力すると,計算法科学オントロジーに規定されるキーワード(解剖学的部位,損傷記述等)を抽出し,それに合わせて事前に定義された最適可視化制御パラメタ(色伝達関数,半透明度等)を選択・アクティブプロファイルに設定し,ユーザが別途指定するボリューム可視化手法(現時点ではダイレクトボリュームレンダリング,等値面,クロスセクションクリッピング)を実行して半自動的に興味ある部位の可視化像を得ることができる.さらにボクセル部分集合単位にユーザ指定の所見をラベル付けすることも可能である.視点を変更しても,連動して興味ある部位を隠すことなく移動し,遺体データの観察視界を塞がない. ②UnityとGoogle ARcoreを利用して,LMMLビューワから出力される可視化画像やラベル情報を遺体もしくはその周囲に重畳表示するシステムLMML-ARの基本機能を試験的に実装した. ③計算法医学の諸操作をフィルタ関数とし,その任意の組合せから構成される無環有向グラフ状の視覚分析アプリケーションを対話的に設計できるビジュアルプログラミング環境aflakを構築し,マルチスペクトル画像を対象にその動作の検証を開始した.リポジトリとの入出力も含む可視化出自データの基本管理機能も実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況分析は以下の三点に要約される. ・実績①のLMMLビューワは,LMMLブラウザの視覚分析能力を格段に向上させる機能を実現した点できわめて大きな進展であるが,動作試験に利用したのは実際の遺体データではなく,既に公開されている損傷無しの人体ボリュームデータに過ぎない.実鑑定データとともに実遺体のボリュームデータを取得できる共同研究環境のいち早い整備が待たれる.さらに,搭載される可視化手法も,計算法科学オントロジーの全域をサポートすべきである. ・実績②のLMML-ARによる情報重畳は,遺体解剖の術中分析結果の即時的なフィードバックにとって不可欠な機能であるが,部位の直観的な指定法とラベル表示の柔軟性にはまだ多くの改善の余地がある. ・LMMLビューアのブラウザとの連動可能性は分散環境でも保証されるようになり,将来の電子裁判に向けた基盤構築の必要条件の一つを満たした点は評価できる.しかし,現在のデータ取得の方向はリポジトリからビューアへの一方向に限定されていて,視覚分析の結果をリポジトリに反映させることができない.双方向性への拡充は,実績③のビジュアルプログラミング環境aflakの出自管理機能の利用が最も有力な解決方法である.
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今後の研究の推進方策 |
・実遺体ボリュームデータの取得に関しては,初年度のアウトリーチの成果として,研究協力を申し出ていただいた千葉大学医学部法医学教室および東京大学医学部放射線科との包括的研究協定を可及的速やかに締結する必要がある.しかし,倫理規範上幾多の考慮すべき点も存在し,さらに時間を要することも予想される.そこで次年度前半には,公開ボリュームデータに損傷部分を人工的に加えた人工遺体を準備して,拡張機能の検証をこれ以上の遅延なく進める等の工夫も必要になると考えている. ・システムアーキテクチャ上の最大の方向転換として,ミドルウェアとしてaflakを採用し,ユーザインタフェースレイヤとしてLMMLブラウザ/ビューワをリファクタリングすることを画策している.研究の後半に向けて,より本格的な出自管理機能と意味の数学モデルによる類似検査機能を追加するうえでも,この方策が最も見通しが高いと確信する.aflakは既に実マルチスペクトル画像解析応用において,優れた実績も公開しはじめており,種々の実装を加速する上で欠かせないマクロ化管理機能の搭載も先行して着手済である
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