近年の多感覚情報提示技術の進歩により、クロスモーダル知覚の研究は新たな局面を迎えつつある。特にクロスモーダル相互作用とその体験によって、感覚や知覚が変化するのみならず、より高次の身体知覚や情動などにも変化が起こり、その結果として行動や意思決定にも変化が現れることが明らかになってきた。本研究では、認知心理学におけるダイナミックな意思決定過程のモデルと行動変容の知見に、五感情報処理技術・VR(ヴァーチャルリアリティ)の分野の先端技術を応用することで、身体・認知能力を変化させるクロスモーダル人間拡張技術につながる知見の蓄積と高度化・体系化を行うことを大きな目的として研究進めた。 本格的なデータ取得が取れる見込みができ、いくつかの研究計画の変更はあったものの、分担研究者と研究協力者の協力を得て、繰越研究案件も含め計画通りに進めることができた。 コロナ禍の影響もあり、対面での実験実施に困難が生じていたが、研究期間を再度延長することで、研究内容の取りまとめを行った。その結果、運動による聴覚刺激の検出能力の変化に対する経験の効果、視覚的錯視の動的表示による効果の増大、クロスモーダル知覚の個人差などの知見を得ることができた。
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