研究課題/領域番号 |
17H00754
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 弘美 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (10268154)
|
研究分担者 |
田川 和義 愛知工科大学, 工学部, 教授(移行) (40401319)
広田 光一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80273332)
佐藤 誠 首都大学東京, システムデザイン研究科, 客員教授 (50114872)
島田 伸敬 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (10294034)
平井 慎一 立命館大学, 理工学部, 教授 (90212167)
陳 延偉 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (60236841)
野間 春生 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00374108)
小森 優 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80186824)
赤羽 克仁 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70500007)
木村 朝子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (20324832)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | バーチャルリアリティ / ハプティック / 軟組織シミュレーション / 柔軟手シミュレーション / 多指・手掌力触覚提示装 / 柔軟物インタラクション / 手掌触覚伝達遠隔VR実地訓練 |
研究実績の概要 |
・柔軟手シミュレータの変形の計算手法について,陽解法による動的変形計算の実装を検討した.GPU並列計算のためにデータ構造やプロセスの割当法の最適化を検討した. ・指先モデルのメッシュ解像度(ノード数5800/要素数27737)について,計算機環境の整備により実時間性が得られる可能性が示された.また,柔軟手モデルのメッシュ解像度を触認識に必要とされる刺激密度に基づき検討し,ビーズを貼り付けた手袋により触刺激の離散化を模擬し分解能の向上により,反力の欠如を補うことができる傾向が確認された. ・三次元プリンタを用いて,人の指の構造を模したロボット指を試作した.ベローズ構造を有する空気圧アクチュエータを三次元プリンタで印刷し,筋肉として組み込むことにより,ロボット指の駆動が可能になった. ・仮想柔軟指と正弦波状の凹凸構造を持つ被接触物間の面接触シミュレータを構築した.シミュレータの精度検証・改良のため,凹凸構造に対応した計測環境を試作した. ・高自由度両手多指力触覚提示のための,指の可動範囲の測定と多数本のワイヤの最適な張方と剛性を保ちつつ軽量なフレームの設計を試みた.手首への力覚提示のための,並進回転の6自由度操作に把持力を付加できる高自由度触覚デバイスの設計しワイヤ制御方法について検討した.また可搬性を重視したウェアラブル触覚デバイスの設計を試みた. ・手術手技工程モデリングのために,腹腔鏡下胆嚢摘出術時の眼球運動を解析した.熟練医についてはモニタ位置から後方に向けて10m程度の広がりを持つ傾向が確認された.熟練医の眼球運動の特徴に基づき視覚的に警告する訓練システムを構築し評価を行った. ・観察に基づく道具を用いる手技工程のプロセスモデルを生成することを目的として,変分自己符号化器(VAE)を用いて多様な物体について適切な把持パタンを想起できる拡張手法を検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・柔軟手指先の変形モデルの解像度と実時間性について検討した結果,ノード数5800,要素数27737について,実験環境では実時間の処理は実現できなかったものの,計算機環境の整備により実時間性が得られる可能性が得られた.・人の触認識の刺激密度に基づくメッシュの解像度の検討を行い,手袋表面にビーズを貼付け,その間をスポンジによる物体により反力の欠如を模擬した実験から,触覚提示の分解能(ビーズ数)の向上により,反力の欠如を補うことができる傾向が確認できた.成果を発表した.・仮想柔軟指(柔軟指シミュレータ)と正弦波状の凹凸構造を持つ被接触物間の面接触シミュレータを構築した.・三次元プリンタを用いて,人の指の構造を模したロボット指の組立が容易になるように,マルチマテリアルの印刷を使用し,硬い骨格と柔らかい靭帯・腱から成る機構を一体で試作した.空気圧アクチュエータを三次元プリンタで印刷し,筋肉として組み込むことにより,ロボット指の駆動が可能になった.・これまでの熟練医の2次元的な注視点に加えて輻輳角を指標とし,注視点の周辺への眼球運動から熟練医の意図をも抽出する方法により,熟練医はモニタ位置から後方に向けて10m程度の広がりを持つ傾向が確認された.(初学者についてはこの傾向が見られない).得られた熟練者の眼球運動の特徴に基づき,視覚的に警告する訓練システムを構築した.・VR腹腔鏡手術シミュレータを用いたハンズオントレーニングシステムとして,メンターの手技操作を視触覚で提示する誘導型教示と被訓練者の操作が許容範囲を超えた際にだけ誘導を行う自立訓練の2階層で構成した.これらはこれまで開発した実験システム上で開発したが,COVID-19の影響で医学生を対象とした実証実験は行えていないが状況改善後進める. 以上から,概ね順調に進展していると思われる
|
今後の研究の推進方策 |
・実時間柔軟手シミュレータの実現を目指し高速化を進める.前年度の検討の陽解法による動的変形計算の改善とGPUによる並列計算の最適化を引き続き検討する.これらにより,実時間での動的接触計算のシミュレーションの精度について評価する. ・計算機環境の整備を図り,指先モデルの変形シミュレーションの実時間性の達成と精度を検証し評価する.・柔軟指と凹凸構造を持つ被接触物(播種等)間の面接触シミュレーションの高速化を検討する.昨年度試作した,1軸ステージと高速度カメラで構成される凹凸構造を持つ被接触物に対応した計測環境(実指先の滑りの様相を計測)を用いて,シミュレーション精度を検証し評価を行う.また,柔軟面接触シミュレータへの応用を想定し,複合現実環境での実世界の柔軟物体に,より柔らかい仮想物体の視覚刺激を重畳描画し,視覚刺激を変更するだけで実物体の柔らかさをどの程度異なって知覚するのかについて実験を実施し評価する. ・昨年度試作した,三次元プリンタを用いて硬い骨格と柔らかい靭帯・腱から成る機構を一体して筋肉として組み込んだロボット指を用いて,接触やなぞりにおける指の滑りに関する特性を調べるとともに,有限要素シミュレーションによる力学解析を行う. ・前年度までの検討に基づき,両手多指操作環境の実現に向けて触覚機能付きデータグローブおよびオープンハンドコントローラ(市販)などと組み合わせ,力覚+触覚のデバイスの構築を目指す. ・これまでの熟練医の2次元的および輻輳角を用いた3次元的な注視点の眼球運動データの解析と分析を基に,熟練医の術中の視線情報をアーカイブするシステムを構築する.さらに熟練医の視線の配り方に基づきガイドする手術手技訓練システムに応用し拡張する. ・遠隔協働VR環境構築については,滋賀病院と立命館大,滋賀医科大学を一般回線とLANで接続するシステムの実証実験を設計する.
|