研究課題/領域番号 |
17H00755
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井野 秀一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究部門長 (70250511)
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研究分担者 |
遠藤 博史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (20356603)
近井 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60758431)
岩木 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究センター長 (70356525)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 福祉工学 / 食事 / トイレ / 健康 |
研究実績の概要 |
本研究では、健康寿命延伸のために、高齢者が食思不振や運動不足を発端に生理的予備能力の低下したフレイル(frailty)、さらには要介護の状態になることを未然に防ぐ「リハ効果」を兼ねた日常生活動作として、「口からの楽しい食事」や「トイレでの快適な排泄」を上手に促す人間支援デバイスを「医歯看工」の連携・共創で開発することを目的としている。 今年度(初年度)は、本研究の土台となる介護食およびトイレの支援技術に関する基礎研究を主に展開した。①介護食の食感惹起に関する基礎研究では、食感惹起・拡張のためのデバイス開発の基礎データの収集を行った。咀嚼時の咬筋運動から生じる生体情報を利用して、擬似的な咀嚼音を聴覚フィードバックした場合に生じる介護食の印象変化の有無・強弱を、味・食感・感想の各カテゴリーについて調べたところ、食材に対する呈示咀嚼音の違和感と印象(主観評価値)変化の大きさとの間に相関性のあることがわかった。さらに、咀嚼音の時間情報である呈示タイミングが食感に対して影響を及ぼすことも示唆された。嚥下機能評価に関する技術開発では、広帯域音響センサを利用したベッドサイドでの簡易嚥下計測デバイスの試作とその評価を行った。また、②トイレでの安楽動作を探る基礎研究では、トイレ空間での安全で安楽な起立動作や姿勢保持などの行動をサポートするデバイス(便座)に必要な機能スペックを人間工学と看護ケアの視点から定量的に調べるために、標準的なトイレ空間を模した行動計測実験のモデル環境を構築した。さらに、そのモデル環境を利用して、運動生理学的評価・生体力学的評価・主観的評価を基本軸に、トイレでの着座・起立動作時における心身負荷等の定量評価のためのデータ収集を行った。さらに、座位で行う手軽な足関節運動の心身に及ぼす基礎効果について、生理・心理面から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究開発の土台となる「口からの楽しい食事を支えるデバイス」および「トイレでの快適な排泄を支えるデバイス」の機能的デザインの基盤構築のための基礎研究を主に展開した。食事支援デバイスの基礎研究では、疑似咀嚼音の聴覚フィードバックと介護食品の食感への心理的効果についての人間工学実験を行い、介護食品の食感改善に向けた有用なパラメータなどを探索した。途中、咀嚼音の呈示タイミングに関する課題が生じたが、追加実験などの対応を行い、デバイスの性能向上に資するポジティブな課題解決につながった。加えて、簡易嚥下計測デバイスの設計と評価では、新たな臨床応用に向けた手がかりを医歯工連携により得た。また、トイレ支援デバイスの基礎研究では、トイレ空間を模した行動計測実験のモデル環境を看工連携で構築し、運動機能の低下した高齢者が気軽にできる座位姿勢でのフレイル予防運動に関する予備実験にも着手した。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、研究の土台となる介護食およびトイレの支援技術に関する人間計測を継続・推進すると共に、それらの基礎データを設計仕様に反映させたフレイル予防のためのデバイスのプロトタイプ開発に着手する。「口からの楽しい食事」を支えるデバイス開発では、人間工学・心理物理実験により基礎データを収集し、食感改善のための感覚フィードバックのデバイスの回路設計および装着機構の試作を行う。また、「トイレでの快適な排泄」を支えるデバイス開発では、トイレ空間での行動をサポートするデバイスの基本動作に関する機能抽出の生体計測とデータ解析を行う。さらに、機能性材料である水素吸蔵合金を利用した便座移動デバイスの基礎設計に着手する。これらの研究開発は医歯看工の横断的連携のなかで議論しながら推進・展開する。
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