研究課題/領域番号 |
17H00767
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高西 淳夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50179462)
|
研究分担者 |
石井 裕之 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 准教授 (10398927)
橋本 健二 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (10449340)
大谷 拓也 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (70777987)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ロボティクス / ヒューマノイド / 冗長自由度 / 関節剛性 |
研究実績の概要 |
本研究では,全身協調による瞬発的な高出力運動生成法の確立,全関節に搭載可能な弾性要素を含む小型高出力関節機構の開発,弾性要素を含めたヒューマノイド自由度構成決定手法の創出の3要素を推進する. 瞬発的な高出力運動生成法として,アクチュエータのみでは発揮できない大出力が必要となった場合において,各関節の弾性体に弾性エネルギーを蓄積し,その後大出力を発揮するという一連の運動生成法を開発した.具体的には,簡易モデルを用いて,脚弾性を考慮して重心の目標運動量・角運動量を実現する重心運動,それを実現するために逆運動学を用いた関節運動,最後に関節弾性を考慮して各関節運動を実現するアクチュエータ運動の順で運動生成を行うことで,弾性を搭載した関節であっても所望の動作を実現することが可能となり,弾性エネルギーを用いることでアクチュエータの発揮出力は低減することができる.提案手法により沈み込んだ後に跳躍を行う動作を達成し,膝や足首関節にて必要な関節出力が分配され,全関節出力の30%程度を,沈み込み時に各関節に蓄積した弾性エネルギーにより発揮できていることを確認した. また,弾性を利用した高出力発揮が可能なヒューマノイドの開発に向けて,高負荷時にも弾性変更ができる小型高出力関節機構を開発した.昨年度開発した関節機構では,高トルクの発揮が必要な関節に用いる場合に大型化してしまう問題があったため,そのような条件時には4節リンク構造を組み合わせ関節角度に応じて減速比を変化させることで大型化を防ぐことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となる本年度は,推進する3要素のうち2要素についておおむね順調に進展させることができた.もう一要素については,本年度の成果を元に翌年度に進展させるものである. 高出力運動生成法として,アクチュエータのみでは発揮できない大出力が必要となった場合において,各関節の弾性体に弾性エネルギーを蓄積し,その後大出力を発揮するという一連の運動生成法として,脚弾性を考慮して重心の目標運動量を実現する重心運動,それを実現するために逆運動学を用いた関節運動,最後に関節弾性を考慮して各関節運動を実現するアクチュエータ運動の順で運動生成を行う運動生成法を開発した.本研究では瞬発的な動作として跳躍運動や重量物持ち上げを目指しているが,提案手法により沈み込んだ後に跳躍を行う動作を達成した.実際のロボットを用いた実験により,膝や足首関節にて必要な関節出力が分配され,全関節出力の30%程度を,沈み込み時に各関節に蓄積した弾性エネルギーにより発揮できていることを確認した.重量物持ち上げ時にも,跳躍と同様のエネルギー蓄積予備動作およびその後の出力発揮動作が有効であるため,翌年度にこの達成を目指す.運動生成法手法そのものとしては,各関節の弾性を考慮した高出力運動として新規性のあるものとなった. また,弾性を利用した高出力発揮が可能なヒューマノイドの開発に向けて,高負荷時にも弾性変更ができる小型高出力関節機構を開発した.昨年度開発した関節機構では,高トルクの発揮が必要な関節に用いる場合に大型化してしまう問題があったため,そのような条件時には4節リンク構造を組み合わせ関節角度に応じて減速比を変化させることで大型化を防ぐことができた.本機構を実際に搭載した脚ロボットを開発し,上記実験を達成した.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度はまず,高出力運動生成法として,アクチュエータのみでは発揮できない大出力が必要となった場合において,各関節の弾性体に弾性エネルギーを蓄積し,その後大出力を発揮するという一連の運動生成法を開発する.これまでに簡易モデルでの検証は進めており,多自由度全身モデルにて有効性の検証を進めるため,脚と胴体を持つロボットモデルを作成し,エンドエフェクタからの瞬発的な大きな力の発揮を検証する.提案手法により関節必要トルクが分配されていることや,関節弾性を協調的に用いることによるアクチュエータ消費電力の低減などを確認する. さらに,上記運動生成法を用いてヒューマノイド自由度構成決定手法を創出し,製作するヒューマノイドの構成を決定する.高出力が必要とされるタスクにおいて負荷を様々に変化させ,前述の高出力運動生成法によって冗長な自由度を既存のものよりも多く有するヒューマノイドの全身の各関節のアクチュエータ出力,関節弾性値の調整範囲を評価し最適化することで,ヒューマノイドがタスクを遂行する際の各関節の寄与度を明らかにする.タスクについては,様々な移動や重量物の持ち上げ・運搬などとし,この結果に基づき,ヒューマノイドが全身の協調運動によって瞬発的な高出力を発揮する際に求められるハードウェア構成を決定する. また,弾性を利用した高出力発揮が可能なヒューマノイドの開発に向けて,高負荷時にも弾性変更ができ,サイズ・重量・出力・弾性範囲のどの点においても全身の関節すべてに導入可能である小型高出力関節機構を開発したため,これを用いて全身ヒューマノイドを開発する.このロボットを用いて,様々な移動やタスクを実行することで全身協調運動を実現できるかを検証する.
|