研究課題/領域番号 |
17H00774
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
仲林 清 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (20462765)
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研究分担者 |
森本 容介 放送大学, 教養学部, 准教授 (00435702)
田村 恭久 上智大学, 理工学部, 教授 (30255715)
瀬田 和久 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50304051)
池田 満 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80212786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 知的学習支援システム / 分散オブジェクト / グループ学習 |
研究実績の概要 |
本研究は,eラーニングにおける自己学習やグループ学習などの多様な学習形態を統合的に支援し,機能追加やカスタマイズに柔軟に適応可能な機能拡張性と,コンテンツや学習方略記述を含むシステムの相互運用性とが両立可能な学習支援システムの構成法に関するものである.特に,システム構成要素である教材オブジェクト間の通信インターフェースに関する基本アーキテクチャを踏まえて,サーバとタブレット端末・スマートフォンなど複数のプラットフォームに分散した統合的な学習支援環境を実現するための分散マルチプラットフォーム学習支援アーキテクチャを確立する. 平成29年度は,分散プラットフォームアーキテクチャの実現可能性をプロトタイプ実装によって確認した.各学習者には,ツリーの各ノードに教材オブジェクトを配置した学習制御構造を割り当てる.教材オブジェクトは,ツリーの親子ノードと通信して,学習リソース提示順序決定などの学習制御を行う.教材オブジェクト間通信は,ロールアップ処理,ポストコンディションルール処理,シーケンシング処理,コマンドリスト生成処理の4つからなる.すべての教材オブジェクトが,4つの通信パターンに対応することで,教材オブジェクトの追加や組み合わせが可能となる.通信パターンを遵守した教材オブジェクトを実装するために,親子間通信を実装する隣接通信層,隣接通信を利用して4つの通信を行う基本通信層,基本通信によるコマンドを受け取って学習制御を行うアプリケーション層からなるレイヤ型のデザインパターンを適用する. サーバと端末に分散したマルチプラットフォームアーキテクチャを実現するため,上位レイヤから,プラットフォーム間の物理的な通信を隠ぺいしたプロトタイプを実装した.隣接通信層,基本通信層をJavaScriptで実装し,同じ教材オブジェクトがサーバ・スマホそれぞれに分散して通信し,連携動作することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は,分散プラットフォームアーキテクチャの実現可能性確認のために,自己学習など比較的簡単な機能の教材オブジェクトを実装してマルチプラットフォーム上での動作確認を行う予定であったが,実装に着手できなかった.これは,隣接通信層,基本通信層について,教材オブジェクト生成時の処理シーケンスの検討などを入念に行ったためである.技術的な障害はないので,平成30年度前半に実装・動作確認を行う.通信最適化方式に関しても,概略検討段階に留まっているので,早急に課題の詳細化を進める.
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今後の研究の推進方策 |
分散プラットフォームアーキテクチャについては,プロトタイプで実装した隣接通信層および基本通信層を利用して,自己学習など比較的簡単な機能の教材オブジェクトを実装してマルチプラットフォーム上での動作確認を行う. 通信最適化方式については,最適化方式1:ロールアップ処理での学習状態変化の影響を考慮して,上位ノードの通信を省略する方式,最適化方式2:学習状態を上位に伝搬させるロールアップルールやポストコンディションルールを事前評価して,ルール実行条件を洗い出しておくルールプリコンパイル方式,最適化方式3:他学習者の学習状態変化や,作問学習での新たな問題教材オブジェクトの追加などの状態変化を,コマンド入力前に先行伝搬させてコマンド実行時の応答を改善する方式,などを検討・実装する. また,教材オブジェクト動的再配置方式の検討を開始する.教材オブジェクトのうちの,アプリケーション層はどのプラットフォームでも動作するので,この特徴を活かして,教材オブジェクトを動作させるプラットフォームを動的に変更する方式を検討する.具体的には,教室内のように学校サーバと直接通信が可能な環境では,グループ学習などが円滑に実施できるように,サーバ上で教材オブジェクトを動作させて学習者間の通信オーバヘッドを低減する.家庭や移動中など,サーバと通信できない環境で学習を継続するためには,サーバで動作していた独習教材部分をタブレットなどにダウンロードし,後で結果の学習状態をサーバと同期する.このように,通信環境やプラットフォームの負荷に応じた教材オブジェクト配置方式,および,学習状態の同期方式を検討する. さらに,実用的学習支援環境への適用を念頭に,本学習支援アーキテクチャを用いた学習シナリオの検討に着手する.具体的には,グループ型作問学習シナリオ,反転学習シナリオ,相互教授シナリオ,などを検討対象とする.
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