研究課題/領域番号 |
17H00777
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐野 有司 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50162524)
|
研究分担者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
鹿児島 渉悟 東京大学, 大気海洋研究所, 特任助教 (70772284)
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 火山活動 / 炭酸塩 / 地球化学 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
本研究では過去の火山噴火の影響を受けていると思われる古環境試料を用いて、その年代測定と元素・同位体分析とを組み合わせることで、過去の巨大噴火の記録を復元することを目的とする。そのために、鍾乳石やサンゴ骨格といった炭酸塩試料の年代を精密に決定するとともに、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)などを用いて高解像度の微量元素分析を行い、過去の噴火イベントの痕跡を検出することを目指している。 2017年度の研究では、過去の大規模火山噴火の履歴・火山活動の情報を記録していると考えられる、南大東島で採取された鍾乳石試料を入手した。試料は国立台湾大学のChuan-Chou Shen博士の研究室においてU-Th非平衡年代測定法により分析済みであり、およそ3万年前の姶良火砕噴火よりも古い年代を持つことが分かっている。以降の研究で、より詳細なU-Th非平衡年代測定法による分析とNanoSIMSやLA-LIBSを用いた元素・同位体分析とを組み合わせて姶良噴火に関するデータの収集を進める。NanoSIMSによる測定は、他地域の鍾乳石やサンゴ骨格・貝殻など炭酸塩試料に対して分析手法の検討を進めた。LA-LIBSは2017年11月に設置し、サンゴ骨格や貝殻の分析によって炭酸塩試料におけるピークスペクトルの確認作業を進めた。手法が確立次第、鍾乳石試料の分析にとりかかる予定である。現在の火山活動による物質循環・表層環境への影響を調べるために、箱根山や草津白根山における観測を実施した。噴気や温泉水・遊離ガスを採取し、大気海洋研究所で化学組成やヘリウムなどの希ガス・炭素・窒素等の同位体を分析し、火山活動の評価を行った。これらの成果は国内外の学会などで報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
U-Th非平衡年代測定法により高精度で年代が分析され、大規模噴火イベントである約3万年前の姶良カルデラ噴火の履歴を含むと期待される鍾乳石試料を入手することができた。NanoSIMSとLIBSを用いた炭酸塩試料分析手法は開発を進めており、今後これらの装置を駆使して過去の噴火履歴の検出・当時の火山活動に関するデータ収集を遂行する。現在の火山活動に関する調査は複数火山における観測により遂行中であり、マグマ情報の収集と火山活動の評価に成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
鍾乳石試料などの分析による過去の噴火履歴の検出・火山活動に関するデータ収集と、現在の火山活動評価・物質循環調査を組み合わせることで、過去から現在に至るまでの火山活動による表層環境への影響を調査することを目指す。
|