研究課題/領域番号 |
17H00780
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
角皆 潤 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50313367)
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研究分担者 |
須藤 健悟 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40371744)
中川 書子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70360899)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 硝酸 / 三酸素同位体 / 硝化速度 / 同化速度 / 窒素循環 |
研究実績の概要 |
湖沼に溶存する硝酸の三酸素同位体異常(地球表層圏の平均的な酸素原子存在度と、一般的な酸素同位体分別を仮定した時に期待される質量数17の酸素原子存在度に対する、実際の質量数17の酸素原子存在度の過剰量)は、その湖沼に対して大気からの沈着を経て供給される硝酸と、湖沼内部で進行する硝化反応を経て供給される硝酸の、供給速度比を反映する。本研究では、この硝酸の三酸素同位体異常の特徴を利用して、対象とする湖沼系内で進行する窒素循環の速度(硝化速度や硝酸同化速度)を、簡便かつ高確度に定量する新手法を確立する。また従来法である培養法に基づく窒素循環速度も同時に観測して比較し、新手法の信頼性(確度)を評価する。本提案の新手法が確立されることで、窒素循環速度の観測が広く一般化・普遍化することが期待できる。 本年度は、琵琶湖における観測を継続的に実施して、湖水中の硝酸の平均的な三酸素同位体異常と湖内で進行する年平均の窒素循環速度(総硝化速度や総硝酸同化速度)を、その時間変化を含めて定量化した。さらに本年度は海洋域に本手法を世界で初めて応用することに挑戦した。具体的には、新青丸(全国共同利用)を用いて、2019年6月と10月の二回に渡って日本海の計5点において、硝酸の三酸素同位体異常の鉛直分布を定量化し、有意な三酸素同位体異常が水深300m付近まで広がっていることを明らかにして、成果を国内学会および国際学会で報告した。今後は大気からの硝酸の沈着速度を求め、これを元に日本海で進行する年平均の窒素循環速度(総硝化速度や総硝酸同化速度)を算出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
湖沼での観測に成功するとともに、第一報は欧文誌への論文掲載が完了した。さらに2019年度は当初予定に無かった海洋環境への応用にも挑戦し、これを成功させた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2020年度は、前半に琵琶湖で追加観測を実施する。追加観測とこれまでの観測で得られた結果の解析を行い、培養法で得られる個々の水塊中の同化速度と、三酸素同位体異常から求められる湖沼全体の同化速度を、それぞれの年平均値と、各観測インターバルのそれぞれで比較し、本研究の主要課題である三酸素同位体異常法の確度に関して、最終的な結論を得る。また両者が有意に異なる場合には、その原因を解釈する。加えて琵琶湖の窒素循環の経年変化の有無や一次生産の特徴を、過去3年間の観測の蓄積から定量的に把握する。また前年度に海洋域で採取した試料に対して本研究で開発した手法を応用し、海洋域における窒素循環速度定量に本手法が応用出来るかどうか、検証する。成果をまとめて欧文誌に投稿する。
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