研究課題/領域番号 |
17H00783
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荻 朋男 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80508317)
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研究分担者 |
光武 範吏 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (50404215)
真下 知士 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80397554)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム不安定性疾患 / DNA修復 / DNA損傷応答 / 次世代オミクス解析 |
研究実績の概要 |
ゲノム不安定性を示す様々なヒト疾患が知られており、これらはDNA修復・DNA損傷応答システムの異常により発症する。我々は、国内外よりヒトのゲノム不安定性疾患症例を多数収集してきた。合わせて、次世代ゲノム解析・精密質量分析 (次世代プロテオーム解析)・高精度DNA修復活性の測定を組み合わせた次世代マルチオミクス解析システムを立ち上げた。収集した症例のうち疾患原因が未同定の検体について本システムを活用することで疾患原因因子の同定を進めている。昨年度までに、ヌクレオチド除去修復 (NER)機構の開始反応に関連する遺伝子に異常を持つモデルマウスの作製に成功しており、本マウスの詳細な病態解析を実施したところ、特徴的な表現系を示すことが確認された。これまでのNER欠損マウスと共通する表現系のほか、新たな知見も複数得られており、引き続き詳細な解析を実施する予定である。小頭症を示す遺伝性疾患の解析から同定された新規遺伝子XおよびXRCC4症候群の疾患モデルマウス作製にも成功しており、病態解析を進めている。さらに、ブルーム症候群疑い症例の解析から新規の疾患原因を特定したほか、いくつかの疾患発症に関わる遺伝子を同定したことから、これらの遺伝子の欠損マウスあるいは疾患モデルマウスの作製を試みた。いくつかのモデルマウスの作製に成功し、ヒトの病態と類似した表現系あるいは、顕著な小頭症など、それぞれ非常に興味深い表現系が確認されている。これらのモデルマウスの病態を検討することで、それぞれのモデルマウスが関連するDNA修復・DNA損傷応答システムについての理解が深まると期待される。解析と合わせて、ゲノム不安定性を示すヒトの遺伝性疾患症例の収集を継続して行った。本研究期間、新たに125例の検体を得ており、現在これらの症例について次世代マルチオミクス解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存症例および昨年度新たに収集した症例のうち疾患原因が未同定の検体について、次世代マルチオミクス解析を実施し、疾患原因因子の探索を進めた。その結果、いくつかの症例で原因因子の同定に至っている。本解析により同定された新規因子に関して、分子生物学的・細胞生物学的解析を進めており、順調に推移している。また一部の疾患原因因子に関しては、疾患モデルマウスの作製を進めている。既存のNER因子であるUVSSAとその関連因子の分子機能解析に関して、非常に興味深い結果を得ており、現在論文投稿に向け準備を進めている。さらに、複数の疾患に関連するモデルマウスの作製に成功し、これら遺伝子改変マウスの病態解析も順調に進展している。これらのモデルマウスの病態に関して解析が進展することで、各DNA修復・DNA損傷応答システムや疾患発症メカニズムの一端が明らかになると期待される。さらに、ゲノム不安定性を示すヒトの遺伝性疾患症例の収集を継続的に行い、2018年度新たに120例を超える検体のバンキングを達成した。新規症例の収集と解析も順調に進行している。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに同定した新規疾患原因因子の分子生物学的解析およびモデル動物を用いた病態解析を進めることで、ゲノム不安定性疾患の分子病態を明らかにするとともに、DNA修復・DNA損傷応答の分子メカニズムに関するより詳細な検討を実施する。転写と共役して働くNER (TC-NER)機構に関して、UVSSAとRNA pol IIoのユビキチン化修飾機構の分子機能解析を継続して実施しており、非常に興味深い結果が得られたことから、本テーマに関する論文投稿を計画している。また、TC-NERに関連するモデルマウスの解析を進めており、新たな知見が多数得られていることから、さらなる詳細な病態解析を計画している。新規の小頭症候群 (遺伝子Xの異常)および、XRCC4症候群の疾患モデルマウスの病態解析も継続して進める。ブルーム症候群疑い症例の解析から得られた新規疾患原因因子について、疾患モデルマウスの作製に成功したことから、病態解析と分子生物学的な解析を実施する。昨年度新たに収集したゲノム不安定性疾患疑い症例に関しては、継続して次世代マルチオミクス解析を実施する。また、本年度も引き続きゲノム不安定性疾患が疑われる症例の収集に力を入れる。
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