研究課題/領域番号 |
17H00797
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
正木 隆 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353851)
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研究分担者 |
柴田 銃江 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10343807)
直江 将司 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80732247)
永光 輝義 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353791)
菊地 賢 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353658)
加藤 珠理 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90467217)
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40514865)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 温暖化 / 山岳地形 / 絶滅回避 / サクラ属 |
研究実績の概要 |
(1)サクラ属樹木の種子散布と個体の定着:調査サイトで得られてきた長期データを解析し、カスミザクラの種子生産数が過去30年間で増加傾向にある一方、実生の出現数は減少傾向にあることが認められた。このことから種子のステージにおいて負の密度効果が強く作用していることが示唆されるとともに、最近の気候変動は更新ステージにおいて負の影響を及ぼすことが示唆された。(2)サクラ属樹木の遺伝子流動:地形が急峻な足尾では、高標高にオオヤマザクラ、低標高にカスミザクラが分布し、種内の開花期が標高によってずれる一方、種間の開花期は標高間で重複した。近距離で血縁度が高い空間遺伝構造がみられ遺伝子流動が空間的に制限されていた一方、両種の雑種は中間的な標高に分布していた。このことからサクラ属樹木は、標高による開花期のずれのため花粉による遺伝子流動が制限されるが、開花期の重複により種間交雑が生じていると考えられた。(3)サクラ属樹木の種子を散布する動物の生息域変化:調査地でツキノワグマ60頭分の行動を解析した結果、長距離を短時間で移動する行動パターンと直径数km以内の範囲を長時間探索して回る行動パターンの組み合わせが検出された。とくに果実の凶作年には、オスの探索範囲が直径10km以上の範囲に広がる傾向があった。また、気温の高い夏季には狭い範囲での探索行動が多く認められた。以上のことから、ツキノワグマの行動パターンは、餌資源量の年変動に加え、気温が影響されて変化することが示唆された。(4)国内外の温帯林多様性情報のメタ解析:公開されている森林データを収集し、各サイトの標高の変動係数の値を得た。このデータを解析、標高の変動係数と森林に出現した種数および系統樹の枝の長さ合計値に正の相関があることを見出した。このことから、森林の樹木の多様性は周辺の地形の標高の空間変動によって高まる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サクラ属樹木の遺伝子流動の制限、標高差のある山域での雑種形成、種子散布者であるツキノワグマの行動に気候変動が及ぼす影響、標高差のある地域で系統樹上での樹木の多様性が高まる可能性、など順調に成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に沿い、サクラ属樹木の全生活史を通じた成長パターンの解明、地形が平坦な山域でのサクラ属樹木の遺伝子流動、ツキノワグマの気象条件に対する応答のおり精密な解析、グローバルな温帯域の樹木の多様性と地形情報の関係解析など、より包括的な成果に向けて研究を進めていく。
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