研究実績の概要 |
本研究では、非可食性バイオマスであるリグノセルロース(木質バイオマス)のセルロース・ヘミセルロース・リグニンをすべて有用化学物質に変換する技術開発を行った。木質バイオマスを反応物として担持金属触媒を用い、低い反応温度でセルロース・ヘミセルロースの水素化分解による糖アルコールへの変換、続いて、より高い反応温度でリグニンの分解反応による芳香族化合物への変換を実現した。 より具体的には、木質バイオマスを反応物として、まず木質バイオマスに含まれるセルロースおよびヘミセルロースを糖アルコールに変換するために、スギに炭素担持白金触媒(Pt/C)と水素を加え、反応温度190 ℃で反応させることにより、ソルビトールやキシリトールなどの糖アルコールに変換した。その固体残渣として、担持金属触媒とリグニンが得られるので、それを400 ℃で処理することにより、リグニンの分解反応が進行し、ベンゼン、フェノール、トルエン、エチルベンゼンなどが得られることが分かった(ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 7, 10445-10451 (2019).)。 さらに2020年度は、超臨界水中で担持金属触媒を用いた木質バイオマスやオルガノソルブリグニンの分解反応を実施し、芳香族化合物が得られることがわかり、触媒担体の効果が大きいことを見出した(J. Jpn. Petrol. Inst., 63, 221-227 (2020); Waste and Biomass Valorization, in press.)。さらなる研究展開として、反応物として使用するバイオマスとして、海洋バイオマスとして得られるキチンを選定し、有用化学物質へ変換する反応を見出した(ChemistryOpen, 10, 308-315 (2021).)。
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