色彩は,知覚的群化や体制化が生じやすいため,デザインの分野にて,情報伝達の手段として頻繁に利用される.しかし,ヒトの色覚には,色覚異常と呼ばれる色覚特性もあり,多様性があることが知られている.そのためこの多様性を考慮せずに色彩デザインを行うと,情報伝達における色の効力を失うだけではなく,ミスリードを引き起こしたりすることもある.これを避けるためには,色覚の多様性を考慮した色彩デザインが必要となり,そのデザイン手法はカラーユニバーサルデザインと呼ばれている.カラーユニバーサルデザインを実践するにあたり,従来は,色覚正常と呼ばれる3色覚向け配色を行ったのちに,色覚異常の色の見えに変換し,色による情報が伝達されるかどうか確認をする方法が一般的であった.しかし,この手法は試行錯誤を要するという欠点があった.そこで,本研究では,色覚配色を先に行うのではなく,2色覚の色知覚を基に2色覚向け配色を行った後に,2色覚に対する色の見えを保持しつつ,3色覚向け配色へと展開する2色覚の色知覚を基点とした新しいカラーユニバーサルデザイン手法を開発し,実用化することである. 前述した2色覚基点のデザイン手法を実現するために, 1948色のNCS色票からなる色見本を令和2年度に作成したが,実際に,2色覚基点のデザイン手法するためには,この色見本が手元に持っている必要性があった.そこで,令和3年度は,色票からなる色見本ではなく,タブレットやスマートフォンで動作するソフトウェアとして色見本をデジタル版へと拡張し,その利便性の向上を図った. その結果,利便性だけではなく,色の選択のしやすさも向上させることができ,さらに,色票の数による色選択の制限もなくなるようなソフトウェアを完成させることができた.今後,開発した本手法がカラーユニバーサルデザインの新たなスタンダートとなることが期待される.
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