研究課題/領域番号 |
17H00834
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50205663)
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研究分担者 |
亀田 修一 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (10140485)
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10249906)
竹内 亮 花園大学, 文学部, 講師 (10403320)
澤田 秀実 作陽音楽短期大学, 音楽学科, 准教授(移行) (40264577)
田中 晋作 山口大学, 人文学部, 教授 (40634738)
荒木 和憲 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50516276)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
高田 貫太 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60379815)
林部 均 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (70250371)
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
成瀬 正和 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 客員教授 (90778630)
今岡 照喜 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (30193668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 青銅 / 同位体比 / 製錬 / 山口県 / 鋳銭司 / 香春岳 / 羽口 / るつぼ |
研究実績の概要 |
山口大学と山口市が共同で発掘調査を実施している周防鋳銭司跡を訪れ、出土した羽口・るつぼのうち、熔融物が付着しているものを選択して、分析用試料の採取と鉛同位体比分析を行った。同遺跡からは井戸や炉跡、木簡などのほか、長年大寳も出土したため、X線CT撮影と鉛同位体比分析用の試料採取を行った。これらの成果は、山口大学・山口市教育委員会が主催した総合調査事業講演会で、一般向けに報告された。 長登銅山文化交流館で開催された日本鉄鋼協会による銅採掘・製錬関係の研究会に参加し、齋藤と竹内がこれまでの進捗状況について報告した。 香春岳の鉱石は、7世紀代から採掘や製錬が行われていた可能性のある資料であり、8世紀以降に採掘・製錬が行われるようになった山口県内鉱山の鉱石と、数値は近いものの、現在歴博に導入されている高精度機器を使えば識別できる、わずかな鉛同位体比の差異がある。したがって、両者を分析して比較し、数値が異なっていれば、国産原料の開始時期を知る上で有用な手がかりとなる。そこで、香春岳の鉱石と、同鉱山と関連性があると推定される北九州市内の遺跡出土青銅資料から分析用試料を採取した。周防鋳銭司跡出土長年大寳とあわせて、2019年度にデータを出して考察していく予定である。 このほか、銅同位体比分析の手法を開発し、いくつかの酸化銅鉱、硫化銅鉱に対して適用し、既報どおり、両者の間には明らかな相違があることを確認した。長登銅山文化交流館で、再現実験試料として酸化銅鉱と製錬によってできた金属銅を入手したので、これらのデータも2019年度に出す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたとおり、周防鋳銭司跡出土資料の選別および鉛同位体比分析を実施することができた。特に長年大寳の出土は、さまざまな関連遺構の検出とともに、この遺跡で銭貨鋳造が行われていたことを裏付ける大きな発見である。 また、以前からの課題となっていた、山口県内の鉱山よりも前の時期から鉱石の採掘と製錬が行われていた可能性がある、香春岳とその周辺地域から出土した資料の調査に着手できたことは、2019年度につながる成果の一つといってよい。 このほか、銅同位体比分析法が確立できたことによって、本研究の課題の一つである、時期による原料の変遷を探るための手がかりを得ることができた。 当初計画が果たせなかった点としては、周防鋳銭司よりも早い時期に銭貨の鋳造を行っていた、長門鋳銭所出土資料の分析が未着手だったことをあげることができる。これは同遺跡が出土遺物ごと国の重要文化財に指定されているためであり、調査を行うためには、指定後に行われた発掘で検出された資料を対象にする必要があるからである。分析しても問題ない資料を選び、2019年度には取りかかりたい。
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今後の研究の推進方策 |
銅鉱石、るつぼ・羽口の熔融物、からみなど、分析対象として鉛の濃度が低い資料が増えてきたので、抽出クロマトグラフィー用樹脂を使った、より回収率のよい鉛の前処理法を開発し、前処理に適用する。周防鋳銭司跡からはこれらの資料のほかに長年大寳が出土し、分析用試料の採取も済んでいるので、鉛同位体比分析によって原料の産地を推定する。 香春岳の鉱石と周辺遺跡から出土した資料の鉛同位体比分析結果から、山口県内鉱山との識別と、国産原料がそれらの遺跡の時期から使用されていたのかどうかという課題について考察を加える。 何種類かの酸化銅鉱・硫化銅鉱を購入し、室内実験によって得られた金属銅とともに銅同位体比を比較し、変動の度合いを調べる。その結果に基づいて、長門鋳銭所、周防鋳銭司跡出土資料や、歴博が所蔵する皇朝十二銭の銅同位体比を比較し、それぞれの時期に、どちらの鉱石による製錬で得られた金属が使用されていたのかを考察する。 都内でシンポジウムまたは一般向けの講演会を開催し、奈良時代・平安時代における銭貨鋳造の実態について広く伝える。
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備考 |
山口市主催、山口大学山口学研究センター共催、鋳銭司・陶地区文化財総合調査事業講演会『「周防鋳銭司」を科学する』(2019)を開催 齊藤大輔、青島啓(ともに研究協力者)「史跡周防鋳銭司跡出土の長年大宝」『出土銭貨』39、129-134(2019)査読無、オープンアクセス無
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