研究課題/領域番号 |
17H00840
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江川 新一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00270679)
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研究分担者 |
石井 正 東北大学, 大学病院, 教授 (00650657)
金谷 泰宏 国立保健医療科学院, 健康危機管理研究部, 部長 (40506317)
辻 一郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20171994)
中山 雅晴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40375085)
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
佐々木 宏之 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (90625097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 災害医療 / 災害診療記録 / 医療ニーズ / システムダイナミクス / モデル化 |
研究実績の概要 |
東北大学医学系研究科倫理委員会の承認(2015-1-690)に基づき、南三陸町、東北大学災害科学国際研究所、プライバシーマーク取得企業との三者間での協定書を締結して東日本大震災後の診療記録の匿名データベース化をほぼ完成した。約2500件による中間解析を行い日本集団災害医学会で発表した。南三陸町のデータは現在10000件による最終的な解析を実施中である。東日本大震災後の非感染性疾患(Non-Communicable Disease)に関する論文報告のシステマティックレビューを行い、メンタルヘルス、循環器疾患に関する論文が多いことが明らかとなったが、実際の医療ニーズの実態とは乖離していることも明らかとなった。 気仙沼地区については、倫理承認(2017-1-314)に基づき気仙沼市立病院、東北大学災害科学国際研究所、プライバシーマーク取得企業間で協定書を締結して、災害診療記録約6000件を匿名データベース化が進行している。さらに、石巻市立病院、石巻赤十字病院に保管されているそれぞれ3000件、14000件の災害診療記録の匿名データベース化にむけたシンポジウムを開催し、災害診療記録の標準化、管理、研究利用についての関係者間コンセンサスを形成した。 南三陸町の2500件による中間解析では、震災前の人口構成とよく似た比率で、非感染性疾患が発生したことが明らかになった。外傷、非感染性疾患、感染症、メンタルヘルス、母子保健などの医療ニーズをモジュールとして分類することで経時的な変化が明らかになった。各モジュールと、それぞれに関連する因子を組み合わせることで、町全体の医療ニーズの時間的推移をシステムダイナミクスのシミュレーションモデルとして構築できた。 東日本大震災後に災害医療コーディネータが全国的に任命されたことを全都道府県調査により明らかにし、論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南三陸町の災害診療記録を匿名データベース化し、約2500件で中間解析を行い日本災害医学会で発表した。現在南三陸町だけで約10000件のデータベースが完成しつつある。さらに気仙沼の診療記録約6000件もデータベース化が進んでいる。石巻市立病院、石巻赤十字病院にそれぞれ保管されている診療記録についての匿名データベース化に関する合意形成のための第1回シンポジウムを開催した。データベース構築、合意形成のための体制づくりは順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
南三陸町の医療ニーズの最終的な解析を約10000件のデータに基づいて行い、論文化する。気仙沼地区に関して同様の解析を行う。石巻市立病院の診療記録、石巻圏合同救護班の診療記録についての合意形成を確定して、倫理申請を行い、承認後に協定締結したうえで、それぞれ3000件、14000件について匿名データベース化を実施する。地区ごとに疾患分類に基づく医療ニーズ時系列変化を明らかにするとともに、地区のなかでの避難所による違い、地区ごとの特徴などを解析する。 得られた時間的、地理的な医療ニーズの特徴を東日本大震災当時の避難所情報、病院の状況などと関連づけて、東日本大震災当時の対象地区における病院外診療の全体像を明らかにする。 医療ニーズのシステムダイナミクスモデルにおいて、支援側の因子を追加して、より現実的な状況を反映しうる災害医療の受援・支援モデルを構築する。
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