研究課題/領域番号 |
17H00841
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 信忠 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (80332758)
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研究分担者 |
野中 朋美 立命館大学, 食マネジメント学部, 准教授 (60644812)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 情報システム / システム工学 / 人工知能 / 医療・福祉 / 栄養学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,一人暮らしの高齢者を対象とし,日常の生活に欠かせない食を起点としながら食の履歴・健康データを収集・分析するための個別クッキングプレート・ネットワーク・システムを構築することで,利用者の健康を維持し,結果として地域の活性化を実現する価値共創の仕組み作りを目的としている. 1. 個別クッキングプレート・ネットワーク・システムの拡張:29 年度に構築した個別クッキングプレート・ネットワーク・システムプロトタイプをもとに、システム機能の高度化を目指し検討・準備を行った。既存プロトタイプでネックとなっていた処理速度向上を目指し,新しいマイコンを利用したシステム構成などを検討し,新たなプロトタイプを構築してシステム機能の向上を図った.Apple Watch のような簡便的な IoT デバイスを用いてモニタユーザの生体情報を取得可能となるようにしていく予定である.プロトタイプを用いた簡便な実証実験を行った. 2. 実証実験とアンケート調査による満足度調査:改良・拡張した個別クッキングプレート・ネットワーク・システムを用いて実証実験を行い,アンケート等のデータ取得後に満足度調査を行う予定であったが,システム開発の遅れにより満足度調査は実現できなかった.31年度に上記1の機能を用いて,食事情報と個人の生体情報をあわせて検討していく. 3. 共創型レシピシステム構築: 提案システムの特徴は,システム管理者が情報・データのハブとなることにある.各ユーザの食事データや食事残渣,生体情報など,データを収集し各ユーザの状態の分析を行う.本年度は,食事バリエーションを考慮した献立作成システムを構築した.情報エントロピを用いて,和食・洋食・中華のジャンルなどが重複して配膳されないように,最適化手法を用いた1ヶ月の献立を作成可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の計画では,個別クッキングプレート・ネットワーク・システムの改良と,あらたな実証実験を行うことによるデータ取得・満足度調査,共創型レシピシステム構築が目的であるが,個別クッキングプレート・ネットワーク・システムの改良に工数を要し,当初予定していた中規模の実証実験を行うに至らなかった.年度当初の研究項目別に進捗状況を述べる. 1. 個別クッキングプレート・ネットワークの拡張:実証実験において問題となった画像撮影・送信などのシステム応答遅延の問題を解決するために,あらたなプロトタイプを構築した.しかし,動作確認を主目的とした簡便的検証は行えたが,実証実験を実行するには至らなかった. 2. 実証実験とアンケート調査による満足度調査:実証実験を実施するに至らなかったため,満足度調査を行うほどのデータの取得が不可能であった.ただし,個別クッキングプレート・ネットワーク・システムのユーザビリティなどの検討・調査は行い,改良に役立てている. 3. 共創型レシピシステム構築:共創型レシピシステム構築の第一歩として,主菜・副菜を中心に,1ヶ月分の献立計画を立案するシステム構築を試みた.和食・洋食・中華などのジャンル等を対象に情報エントロピを用いて献立のばらつき具合を評価することで,エントロピ最大化を実現する献立最適化システムの構築を行い,その有効性を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
30年度に構築したシステムの動作検証・改良を進め,実証実験を行う.そして31年度に推進予定の以下の研究項目を実施する. 1. 個別クッキングプレート・ネットワーク・システムの拡張:29年度・30年度に実施した検証実験の結果をもとに,提案システムのさらなる改良を行う.また,食事に関するデータだけでなく,簡便的な IoT デバイスを用いてモニタユーザの生体情報を取得し,それらを個別クッキングプレート・ネット ワーク・システムを介して食事データとともに総合的な管理・サポートが可能となるように拡張する. 2. 実証実験とアンケート調査による満足度調査:改良・拡張した個別クッキングプレート・ネットワーク・システムを用いて,31年度中に1ヶ月程度の中期的な実証実験を行い,実証実験で得られたデータを解析する.食事に関するデータだけでなく,別途取得する生体情報も用いて,モニタユーザの健康管理可能かどうかの検証を行う. 3. システム最適化・機械学習による共創型レシピシステム構築:30年度に構築したシステム最適化によるレシピ計画システムを拡張し,収集したデータを対象にシステム最適化・機械学習を用いて,データからユーザの好みを抽出するとともに,食事箋とユーザの嗜好の両方を考慮したレシピ提案システムを構築を試みる. 4. 研究の総括: 研究の総括を行い,本研究課題に残された課題を見出し,提案手法の実用化に道筋をつける.また,提案システムは食を起点に地域活性化を目指したシステムであるが,一人暮らしの高齢者だけが対象となるものではなく様々なユーザが対象となり得るため,提案手法・システムの汎用化を検討する.成果の一部を関連学協会で発表するなどアウトリーチ活動を行う.
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