研究課題/領域番号 |
17H00846
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
飛田 哲男 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00346058)
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研究分担者 |
竹村 次朗 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40179669)
渦岡 良介 京都大学, 防災研究所, 教授 (40333306)
岡村 未対 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50251624)
上田 恭平 京都大学, 防災研究所, 助教 (60649490)
一井 康二 関西大学, 社会安全学部, 教授 (70371771)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遠心模型実験 / 一斉試験 / 液状化 / 飽和砂地盤 / 地震 / 模型実験 / 地盤災害 |
研究実績の概要 |
本研究は,遠心実験と数値解析手法について,国内外の複数の研究機関が一斉に実験と解析を行うことで,両手法による災害予測精度を評価し,更なる精度向上を図ることを目的とする.平成29年度は,UC Davis, RPI(以上,米国), Cambridge(英国), IFSTTAR(フランス), 浙江大学(中国),KAIST(韓国),国立中央大学(台湾),愛媛大学,京都大学,関西大学の研究者が参加し,実験結果のばらつきを評価した. 実験対象としたのは傾斜角5度の飽和砂地盤であり,加振による応答加速度,過剰間隙水圧,地盤変形等について,地盤の相対密度と入力加速度レベルとの相関を調べた.その結果,同一の地盤材料,模型地盤の作成方法,入力加速度入力を行っても,研究機関ごとに多少ばらつきのある実験条件となった.このため,一斉実験の結果が一致するかどうかだけを評価するのではなく,先に述べたように地盤の硬軟の程度と入力加速度レベルの大小に着目し,実験結果との相関を評価した.その結果,一つの参加研究機関の結果を除き,それらの間に高い相関がみられた.すなわち,地盤の硬軟の程度や振動レベルを実験機関ごとに一致させることは,手作業による誤差の混入や加振装置の性能の違いなどにより非常に難しいものの,硬い地盤,小さな入力加速度レベルでは応答は小さくなり,逆に柔らかい地盤,大きな入力加速度レベルでは応答が大きくなり,そのばらつきの傾向はランダムではなく相関をもつものであることが分かった.このことは,参加機関の模型実験の技術レベルがほぼ等しいものであることを示すとともに,今回設定したような比較的単純な模型地盤の実験結果の妥当性が示されたものといえる. 本年度に実施した国際的かつ大規模な一斉模型実験はこれまでに例がなく,今後模型実験を行う上でのベンチマークになる成果を得ることができたものと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究の進捗状況としては,おおむね順調に進行しているものと思われる.以下,初年度に実施した研究について特筆すべき点についてまとめて示す. これまで,模型実験の方法については,研究機関ごとに供試体の準備の仕方,センサーの仕様が異なるため,実験結果がばらつくことは当然であるとされてきた.しかし,そのばらつきの程度が評価されたことはなかった.本研究では,複数の国際機関で実験条件をできる限りそろえることが重要であるため,インターネットを利用した会議を一年間,ほぼひと月に一回の頻度で開催し,実験の進捗や問題点を共有しながら研究計画を遂行することにした.参加機関の研究者の協力により当初の計画が確実に実行され,2017年12月には,UC Davisにおいて参加者が一堂に会するワークショップも開催され,機関ごとの実験結果のばらつきの程度が定量的に評価された.このことは,模型実験の信頼性の向上につながる大きな成果であるといえる.また,各機関の大学院生の研究成果としても有益な成果が得られたとともに,次代を担う研究者の養成と実験方法の標準化への方向性が得られた.特に,実験方法の標準化については,模型地盤の硬軟を評価するためのミニチュア貫入試験装置を開発し,全機関で同一の装置を用いることで地盤の硬軟を定量的に評価するという世界初の試みもなされた.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は,2017年度と同じ研究機関の国際的な協力により我々の提案する拡張型相似則の検証実験のための一斉実験を行う.対象とする地盤模型は2017年度に実施したものと同一のものに加え,新たに設定するものとする.2017年度の共同研究により参加研究機関の研究者の間にコミュニティーが形成され,お互いの顔が見える状態になっており,今年度の計画も順調に遂行できるものと思われる.実験装置の故障など,予期できない事態が生じた場合には,実験結果の報告期限を延長するなどして柔軟に対応したい.2019年3月には,今年度の成果報告会を兼ねたワークショップの日本開催が予定されている.現在それに向けての実験計画,数値解析の準備を進めている段階であり,今夏から秋にかけて実験および解析を実施する予定である.実験については,各機関のボランティアで実施していただくこと,また装置の使用可能期間が機関ごとに異なるため,できるだけ早い段階で実験の実施計画の詳細を提示し,実験を実施してもらうことが重要である.また,ひと月に一度程度の頻度で国際遠隔会議を実施し,状況報告と問題点の共有を図るものとする.拡張型相似則については,我々の研究グループが新しく提案するものであるため,各実験機関に対しては丁寧に説明し,意図を理解してもらう必要がある.このことから本研究の主担当者が現地に赴き,実地で説明することも想定している.
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