研究実績の概要 |
本年度は、主に分子スケールと細胞スケール、メゾスケール、マクロスケールの研究課題を推進した。主要な研究実績は以下の通りである。 1.分子モーターで駆動される微小管の数理モデル化に成功し、2本の繊毛が協調運動することで効率的に水流を生み出していることを明らかにした。(Omori, et al., J. Biomech. Sci. Eng. 2018) 2.繊毛虫のテトラヒメナが、固体壁面に留まることができることを実験的に示し、そのメカニズムを数値シミュレーションで明らかにした。この成果は、科学で最高峰のPNAS誌に掲載された。(Ohmura, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2018) 3.繊毛虫のゾウリムシも固体壁面に留まることができることを実験的に示し、細胞形状の影響を数値シミュレーションで解明した。(Nishigami, et al., Commu. Integr. Biol., 2018) 4.大腸菌が壁面近傍でどのように振舞うのか、数値シミュレーションで検討した。その結果、腸壁のようなひだが存在すると、壁面に長時間滞在できないことが明らかになった。(Yang, et al., Physical Review E, 2019) 5.マウス初期胚において、ノード繊毛が作り出す流れがどのような生物学的機能を生み出すのか、マルチスケールの数値シミュレーションを行った。その結果、センサー繊毛が水流を感知していることが示唆された。(Omori, et al., Roy. Soc. Open Sci. 2018) 6.遊泳微生物を模擬した、マイクロロボットの推進メカニズムを考案した。流体振動を制御することで、任意の方向に運動させられることを示した。(Morita, et al., Physical Review E, 2018a, b)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度は、特筆すべき研究成果として、科学で最高峰のPNAS誌に論文を掲載することができた(Ohmura, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2018)。この成果は、実験と数理モデル、数値シミュレーションが有機的に融合することで初めて生まれるものであり、当初の予定よりも早く成果が結実した。また、バイオミメティクスの応用テーマであるマイクロロボットの開発にも成功し(Morita, et al., Physical Review E, 2018a, b)、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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