研究実績の概要 |
本研究課題では幹細胞微小環境モデルの動的変化を用いて幹細胞の機能(分化・自己複製)を制御する新しい技術基盤の開拓を目指している。 (WP1)「化学的刺激による造血幹細胞の自己複製と遊走の制御」では、「臨床薬の作用機序を造血幹細胞の変形と運動の時空間パターン(動的表現型)によって識別する」という成果(Monzel,... Ho, and Tanaka, Sci. Rep. (2018))をさらに大きく発展させ、これらの実験結果を定量的に再現する数理モデルを確立した(Ohta,... Ho, and Tanaka, Sci. Rep. (2018))。 (WP2)「物理的刺激による間葉系幹細胞の自己複製と分化の制御」では、連携研究者中畑と開発した「弾性率を動的に可逆変化できるヒドロゲル基板」を用いて、一か月にわたって9割近くの間葉系幹細胞の多分化能を維持できること、また硬さを周期的に変化させることによって幹細胞の自己複製を抑制できることを示した(Linke, Nakahata,.. Tanaka, 論文準備中)。 (WP3)「細胞間接着を使った幹細胞の多能性維持」では、細胞接着が弱いナノファイバー上では多能性遺伝子が維持されることを報告した(Wu,.. Tanaka, Liu, Stem Cell Rep. (2018))。また連携研究者長谷川らとともに、上記ヒドロゲル基板上でヒトhiPS細胞が接着・コロニー形成する過程を追跡、多能性遺伝子の維持も確認した。 これに加え、表面のトポグラフィーを自在に変調できる基板を用いた筋芽細胞の制御(Linke,. Suzuki,.. Tanaka, Langmuir (2018))や、ナノ集光した放射線を用いて凍結細胞内部の化学組成を25nm精度で定量計測するという走査型X線蛍光顕微鏡によるイメージングにも成功した。
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