研究課題/領域番号 |
17H00857
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 直樹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40147327)
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研究分担者 |
服部 麻木 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90312024)
岡本 友好 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00246381)
宮脇 剛司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70246445)
岡本 愛光 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20204026)
花房 昭彦 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10547839)
橋爪 誠 九州大学, 医学研究院, 教授 (90198664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 四次元画像表示装置 / 四次元データ / 手術ナビゲーション |
研究実績の概要 |
心臓の拍動、四肢の運動など人体の動的変化、すなわち4次元現象を定量的に捉え、解析することはこれからの医学に大きな貢献となるはずである。しかしながら現実には4次元データを真に4次元的に表示することのできる表示装置は、まだこの世の中に存在していない。最近の生体画像技術の発展により、ようやく生体の4次元データを取得することができるようになりながら、これらを従来のモニターという2次元平面的に投影して暫定的に使用するという、理不尽な手法が日常臨床でも行われている。人体の構造と動態を充分表示可能な高い時空間分解能を持つ4次元画像表示装置の開発とその臨床応用が本研究の目的である。 われわれが実現化させようとしている4次元表示装置は、画像表示空間の周囲に同心円上に配置したプロジェクタ群から対象物のプロジェクションデータを投影し、実空間上で複数のプロジェクションデータを光学的に合成して立体像を結像させるものである。さらにこの立体像を時間軸に沿って表示することにより、立体構築物の時間的変化を表示することが可能となる。透明な空気中での4次元像の結像は不可能であるため、本手法では結像に最適の条件を満たす空間的濃度分布を持つ円柱上のミスト(霧)の流れの中に立体像を結像させる方式をとるものとした。 下記の進捗状況に示すごとく、本年度は4次元表示装置の原理追求を行うとともに要素技術となる照射アセンブリ機構機構の開発とミスト発生装置の開発を実施して来年度の第1号本装置組み上げ、いくつかの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず本年度内に4次元表示装置の表示原理の追求と照射アセンブリ機構機構の開発とミスト発生装置の開発を実施した。 われわれが実現しようとしている4次元画像の表示装置は、コンピュータ内の仮想空間における演算による立体構造の構築ではなく、光学的な結像による実空間での立体像の構築ができる機能を持たせることが必須である。このためには最適の条件を満たす空間的濃度分布を持つ円柱上のミスト(霧)の流れの周囲に同心円上に配置したプロジェクタ群から対象物のプロジェクションデータを投影し、複数のプロジェクションデータを光学的に空間合成して立体像を実空間上に結像させるものである。 要素技術開発としては、まず空間上に結像させるための鍵でもある円柱上のミスト(霧)の流れを発生装置構造の開発に務めた。発生した霧を安定した層流として空間に放出する装置に装着するハニカム構造の整流管の構造と霧を押し出すポンプを設計して試験装置を製作した。ハニカム構造の内部形状と材質を変化させることにより、中心部の濃度が高く周辺部に向けて濃度の低いガウス分布上の霧の流れを作るための制御機構を構築することに成功した。特にハニカム構造の材質と内面表面の性状がミスト濃度分布の安定性を決定することを発見した。 複数方向からのデータのプロジェクション法についてはプロジェクションの方向とプロジェクション数を変更できる試験装置を開発し、これらの条件が変わることにより結像される画像がどのように変化し、観察者の認識が変わってくるかを調べた。特に1対1の実寸で患者患部の位置、臓器表面の深さを実感して計測するための表示条件を絞り込み、結像させている空間に指を入れた際の画像全体への影響なども調査した。結果的に空間結像方式であるが故に複数の観察者による観察も可能であり、4次元像を前にした複数の観察者による討議も可能となることも証明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半では4次元表示装置の第1次試作機完成をめざす。平成29年度に作製した円柱上のミスト(霧)の流れを発生させる装置、小型プロジェクタ群の照射アセンブリ機構、画像処理システムを結合させ装置の1号機を完成させる。(鈴木、服部(慈恵医大・高次元画像研)が担当する)。 また空間に結像させた画像に対する時空間分解の計測法を開発する。なぜならモニターに表示された画像の分解能を評価する方法はあっても空間上に表示された立体像の分解能を評価するための手法がないため、このための評価法、テストパターンを作製して手法を決める。(鈴木、服部(慈恵医大・高次元画像研)、花房(芝浦工大)が担当する)。 そしてこの手法をもって開発装置の検証をしつつ装置自体の改良を行う。ドライファントムを用いた撮像と表示の実験を行うとともに、研究所内のCT装置と動物実験施設を用い、ブタによる実験により臓器内構造、血管走行これらの動的変化の認識率を検証する。(鈴木、服部(慈恵医大・高次元画像研)、花房(芝浦工大)、橋爪(九大)、岡本(慈恵医大、外科)が担当する)。 模擬手術室でのテストデータを用いた、診療各科(腹部外科領域、産婦人科、形成外科)での表示画像の評価を行う。そしてこれとともにナビゲーション手術使用時の画像の特性を検証する。また本表示装置が手術ナビゲーションのみならず診断、術前シミュレーション、手術計画にどのように利用できるか検討を行う。(橋爪(九大)、岡本(慈恵医大、産婦人科)、宮脇(慈恵医大・形成外科)、岡本(慈恵医大・外科)、鈴木、服部(慈恵医大・高次元画像研)、花房(芝浦工大)が担当する)
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