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2017 年度 実績報告書

自然治癒力増強再生治療を目指したマクロファージ・幹細胞体内動態の制御技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17H00862
研究機関京都大学

研究代表者

田畑 泰彦  京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)

研究分担者 山本 雅哉  東北大学, 工学研究科, 教授 (10332735)
菰原 義弘  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40449921)
梅澤 明弘  国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 再生医療センター, 副所長/再生医療センター長 (70213486)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード生体材料 / 免疫学 / 移植・再生医療 / 薬学 / 生体機能利用
研究実績の概要

本研究の目的は、炎症の慢性化と治癒修復化とのスイッチングで重要な役割をしているマクロファージ(Mφ)と体内に存在する組織幹細胞本来のもつ自然治癒力を活用した再生治療技術の創生である。この目的を達成するために、Mφの体内動員とその生物機能を修飾するための技術を開発する。Mφの動員を促すとともに、慢性化Mφ(M1)に対する治癒修復化Mφ(M2)の比率を、薬を用いて積極的に高め、修復過程を促す。平成29年度は、Mφの動員を高める因子やM2比率を高めるMφ機能修飾薬を生体吸収性高分子ハイドロゲルから徐放化できる薬物徐放システムを創製した。まず、この薬物徐放ハイドロゲルシステムからのMφ動員因子とMφ機能修飾薬の徐放化の確認を行った。ハイドロゲル作製方法を変えることによって、上記2つの薬物の徐放パターンを変化させることが可能となった。in vitro細胞培養実験で、Mφ動員因子がMφの動員を高めることを、実証した。次に、Mφ機能修復薬の生物活性を徐放システムを用いて評価したところ、期待通りM2比率が高まり、Mφ機能が修復できることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞動員因子の徐放化のための生体吸収性ハイドロゲルをデザイン創製した。ハイドロゲル材料としてはゼラチンを用いた。加えて、ゼラチンの化学的性質を変えるためにアニオン化、カチオン化、疎水化などのゼラチン誘導体を作製した。ゼラチンおよびゼラチン誘導体をグルタルアルデヒト(GA)あるいは熱脱水処理を行うことで生体吸収性のハイドロゲルを作製した。Mφ動員因子として、難水溶性のスフィンゴシン-1-リン酸あるいはそのレセプターアゴニストを用いた。M φ機能修飾薬としてピオグリタゾンを取り上げた。ポリ乳酸あるいはコレステロールを化学導入したゼラチンの疎水性誘導体を作製した。ゼラチン誘導体と混合ミセル複合化することによって、難水溶性のMφ動員因子の水可溶化が可能となった。Mφ機能修飾薬であるピオグリタゾンを含有したサイズの異なるポリ乳酸微粒子を調製した。まず、この薬物徐放ハイドロゲルシステムからのMφ動員因子とMφ機能修飾薬の徐放化の確認を行った。ハイドロゲル作製方法を変えることによって、上記2つの薬物の徐放パターンを変化させることが可能となった。
Mφ動員因子の徐放化ハイドロゲルの細胞移動(動員)活性をMφ細胞株Raw細胞およびマウス骨髄単球より分化誘導したMφを用いた細胞培養法で評価したところ、徐放化因子がMφ動員活性をもっていることがわかった。ピオグリタゾン含有ポリ乳酸微粒子を用いて、in vitro 細胞培養実験によりMφ機能修飾作用を調べたところ、微粒子サイズがその作用(M2比率の増大)に影響を与えていることがわかった。この現象はこれまでに実証されておらず、新しい知見である。
水可溶化Mφ動員因子およびMφ機能修飾薬含有ポリ乳酸微粒子を含んだハイドロゲルからの2つの薬物の徐放を調べたところ、上記と同じような徐放カーブを得ることができた。

今後の研究の推進方策

前年度に得られた結果を基に、Mφ動員因子およびMφ機能修飾薬の再生治療効果について、骨欠損および皮膚欠損動物モデルを用いて検討する。ラット骨欠損へMφ動員因子および機能修飾薬ミセル含有ハイドロゲルおよび細胞動員因子含有ハイドロゲルを投与した後、欠損部における骨および皮膚再生修復について評価する。ハイドロゲルの生体吸収性、因子および薬の投与量や徐放性が再生修復に与える影響を検討する。欠損部での再生修復評価は、再生組織の組織学的観察、再生過程における組織中のアルカリホスホターゼ、オステオカルシン、およびコラーゲンなどの生物マーカーの定量により行う。加えて、Mφの体内動員と機能を生物学的および生化学的に評価する。Mφ動員因子およびMφ機能修飾薬の濃度と徐放性が体の治癒促進過程に与える影響について調べる。治癒過程は、炎症細胞の浸潤性、種類、組織中の炎症、抗炎症性の液性因子を組織学的、生化学的、分子生物学的に調べることにより評価する。
Mφ動員因子およびMφ機能修飾薬の徐放化ハイドロゲルを骨欠損モデルの欠損部位に埋入、その部位における細胞動員や骨および皮膚再生などについて組織学的、生化学的、分子生物学的に評価する。Mφ動員因子、Mφ修飾薬などの濃度と徐放性などが細胞動員に与える影響について調べる。
細胞動員因子徐放化ハイドロゲルを骨欠損に導入、その部位における細胞動員や骨および
皮膚再生などについて組織学的、生化学的、分子生物学的に評価する。細胞動員因子の濃度と徐放性などが細胞動員と組織再生治癒と過程に与える影響について調べる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] Delivery Technology of Bio-Signals to Realize Tissue Regeneration2017

    • 著者名/発表者名
      田畑泰彦
    • 学会等名
      12thInternational Symposium on Frontiers in Biomedical Polymer(FBPS'17)
    • 招待講演
  • [学会発表] Delivery Technology of Bio-Signals to Realize Tissue Regeneration2017

    • 著者名/発表者名
      田畑泰彦
    • 学会等名
      The 6th Asian Biomaterials Congress
    • 招待講演
  • [学会発表] Release Technology of Cell Recruitment Molecules to Induse In Situ Tissue Regeneration Therapy2017

    • 著者名/発表者名
      田畑泰彦
    • 学会等名
      International Seminar on Biomaterials and Regenerative Medicine(BioReMed2017)
  • [学会発表] 炎症細胞をあやつるバイオマテリアル技術2017

    • 著者名/発表者名
      田畑泰彦
    • 学会等名
      医工学フォーラム-2016年度特別学術講演会-
  • [学会発表] 単球動員作用をもつ難水溶性薬剤を徐放可能なフィブリンゲルの作製2017

    • 著者名/発表者名
      田中隆介、Kim Yanghee、田畑泰彦
    • 学会等名
      第33回日本DSS学会学術集会、京都
  • [学会発表] 組織再生のための単球遊走薬物徐放システムを組み込んだフィブリンゲルの調製と抗炎症性マクロファージ分化作用2017

    • 著者名/発表者名
      田中隆介、Kim Yanghee、田畑泰彦
    • 学会等名
      第38回日本炎症・再生医学会、大阪
  • [学会発表] 抗炎症性マクロファージ動員のための疎水性薬剤徐放化フィブリンゲルハイドロゲルの作製2017

    • 著者名/発表者名
      田中隆介、田畑泰彦
    • 学会等名
      第39回日本バイオマテリアル学会大会、東京
  • [学会発表] pioglitazone 徐放化粒子の作製とマクロファージへの作用2017

    • 著者名/発表者名
      百鳥直樹、田中隆介、田畑泰彦
    • 学会等名
      日本バイオマテリアル学会関西ブロック 第12回若手研究発表会、奈良
  • [学会発表] マクロファージに作用する2種類の疎水性薬物の徐放化材料の作製2017

    • 著者名/発表者名
      百鳥直樹、田中隆介、田畑泰彦
    • 学会等名
      第39回日本バイオマテリアル学会大会、東京

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公開日: 2018-12-17  

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