研究課題/領域番号 |
17H00864
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 信樹 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30271638)
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研究分担者 |
松崎 典弥 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00419467)
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 准教授 (90384784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ソノポレーション / 超音波治療 / 高速度顕微観察 / ファインバブル / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
【ソノポレーション観察】(工藤)高速度観察,共焦点顕微観察,落射蛍光観察機能をポートの切り替えのみで実現できる顕微鏡観察システムを開発した.共焦点顕微鏡でも高速度撮影が可能な照明光強度を実現できる光学系を開発した.また,NAが大きい対物レンズを用いてソノポレーションにおける細胞と気泡の相互作用を高画質・高速報観察できる手法を新たに考案し,これを実現する観察チャンバを開発,有効性を確認した. 【ゲル毛細血管モデル】(工藤)毛細血管内における気泡のダイナミクスを解明するために,硬さが生体組織とほぼ等しいアクリルアミドゲルを用いて直径10-60ミクロンの管腔構造を持つゲル毛細血管モデルを作成する手法を開発した.モデルを用いて内腔における微小気泡の膨張・収縮を高速度観察し,モデルの有用性を確認した. 【3次元細胞培養を用いた毛細血管網モデル】(松崎,工藤)松崎の開発手法を参考に,3次元細胞培養技術を用いた毛細血管網モデルの作成について検討した.コラーゲンゲル内でヒト臍帯静脈内皮細胞を培養する手法を用いて,工藤の研究室でも毛細血管網モデル作成することに成功した.さらに,管腔内に気泡を導入する方法,超音波照射での観察手法についても検討し,作成モデルがソノポレーション研究に利用可能であることを確認した.モデルの再現性等については,検討を続ける. 【樹状細胞へのソノポレーション】(鈴木)株化樹状細胞(DC2.4)を用いて,浮遊細胞に準じた状態(細胞骨格が未発達な状態)で接着培養する手法を開発した.この手法を用いて,付着状態と準浮遊状態の細胞,気泡が表面に付着した細胞と気泡を貪食した細胞を用いてソノポレーション現象の違いを調べる実験を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【ソノポレーション観察】 ソノポレーション観察システムの開発は当初初年度に完了,昨年度(第2年度)に新たに導入した装置の有用性(共焦点観察,高速度観察)の評価を行う予定であった.実際には,初年度に共焦点観察,高速度観察の有効性を個別に確認し,本来の目的であったシステムの開発完了は第2年度となった.しかし,初年度の経験を基に,開発システムが優位性の確認を効率よく行うことができたため,観察システム開発については順調に進展していると考えている. 【3次元細胞培養を用いた毛細血管網モデル・ゲル毛細血管モデル】 生体内の微小気泡は管腔内に存在するため,その状態を模擬した毛細血管モデルでのソノポレーション現象の観察は,本研究における重要なポイントである.計画開始から2年をかけ,松崎の手技を参考に,3次元細胞培養を用いた毛細血管網モデルの作成とソノポレーションへの応用技術の開発を北大で実現することができた.モデルの再現性や実験手法の確立など検討すべき点は残されているが,計画段階から困難を予想していた目標を達成できた点は重要な成果である.また,コンテンジェンシープランとして進めてきたゲルで作成した毛細血管モデルも開発に成功し,管腔内の気泡のふるまいに関する物理的な検討については,モデル実験で再現性の高い実験結果が得られる見通しである.以上より検討は順調に進展していると考える. 【樹状細胞へのソノポレーション】 株化細胞を用いて,接着細胞と準浮遊状態の細胞,および気泡が表面に付着した細胞と貪食した細胞でのソノポレーション現象の違いについて実験を開始した.しかし,3次元細胞培養を用いた毛細血管網モデルについては検討に至っておらず,最終年度の実験内容は明確化されていない.それゆえ,この点については検討がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
【ソノポレーション観察】(工藤)従来よりもコマ数が10倍以上多く高画質な高速度撮影ができる特長を生かし,高音圧短パルスと低音圧長パルス照射下でのソノポレーション現象を高画質観察し,現象や超音波照射至適条件の違いを明らかにする.より多くの観察を行い,積極的に発表する. 【ゲル毛細血管モデル】(工藤)ゲル毛細血管モデルを用いて管腔内での気泡のダイナミクスを検討する.気泡径,管腔径,超音波照射条件などのパラメータと管腔が受けるストレスの関連を調べる.また,管腔内腔に血管細胞を培養する手法を開発し,ゲルモデルを血管内皮細胞間の密結合の評価に利用することの可能性を検討する. 【3次元細胞培養を用いた毛細血管網モデル】(松崎,佐々木,工藤)血管内皮細胞を用いた毛細血管網モデルの作成手技を改良し,再現性の高い作成技術を確立する.モデルを用いて,血管内にある微小気泡が超音波の照射を受けて生じる気泡のダイナミクスを高速度撮影し,ゲルモデルと比較する.さらに,血管内に封入した蛍光物質がソノポレーション後に血管外に漏出する様子を共焦点観察し,ソノポレーションによる血液脳関門の開放機序について検討する.また,新たに佐々木を分担研究者とし,生体内顕微観察法の開発を開始する.ただし,モデル開発に目処が立ったため,本年度の研究の重点は上記2つのモデル実験に置く. 【樹状細胞へのソノポレーション】(鈴木)微小気泡やナノ粒子を株化樹状細胞の表面に付着・貪食させた条件でソノポレーションを行い,これらの条件がソノポレーション現象に与える影響を明らかにする.また,逆にソノポレーションを行うことにより,細胞の近傍に置かれた気泡のシェルやナノ粒子が樹状細胞内に取り込まれる現象を調べる.さらに,がん細胞との比較を通じて,樹状細胞への抗原提示におけるソノポレーション応用の意議を明らかにする.
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