研究実績の概要 |
申請者は, 臨床的N0リンパ節がリンパ系を介する全身転移の起点と考えるリンパ節介在血行性転移理論を提唱してきた. リンパ行性薬剤送達法とは, この概念を理論的根拠にして, 臨床的N0リンパ節とその下流側のリンパ節の治療を目指す治療法である. これまでリンパ行性薬剤送達法の有効性を明らかにしてきたが, リンパ行性薬剤送達法に有効な溶媒特性が明らかにされてこなかった. 本年度は溶媒特性の粘度および浸透圧に着目し, 抗腫瘍効果が最大限に示される二つの因子の最適な値の範囲を求めた. 実験ではリンパ節腫脹マウスMXH10/Mo/lprマウスを使用し, 腫瘍細胞にはKM-Luc/GFP細胞およびFM3A-Luc細胞を用いた. 抗腫瘍効果は画像解析機器(生物発光イメージングシステム, 高周波超音波イメージングシステム, マイクロCTイメージングシステム, 蛍光イメージングシステム)および病理解析から明らかにした. 最適化された粘度域は1 - 40 mPa・s, 浸透圧域は700-2800 kPaであった. この最適範囲域で, 以下の点が明らかになった. (1)リンパ行性薬剤送達法で送達される液体の流動特性に関しては粘度が陽には寄与しないこと. (2)浸透圧は抗腫瘍効果を規定すること. (3)副作用は無視できること. 本研究成果は, リンパ行性薬剤送達法の製剤設計に有効な指針を与えるものと考えられる.
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