研究課題/領域番号 |
17H00867
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森 健策 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10293664)
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研究分担者 |
北坂 孝幸 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (00362294)
小田 昌宏 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (30554810)
三澤 一成 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 研究員 (70538438)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コンピュータ外科 / 画像処理 / 知能ロボティクス / 医用画像 |
研究実績の概要 |
解剖学的構造空間での対応付けに基づく内視鏡手術ナビゲーション、すなわち、解剖構造ドリブン型内視鏡手術支援手法の開発とその診断治療への応用を目指し、令和元年度は「解剖構造ドリブン型内視鏡手術支援のための画像認識理解手法の開発」に関する以下の研究項目を実施した。 (1) 解剖学的名称により記述された内視鏡手術プランニング自動生成法の開発:これまで開発した解剖構造認識手法により、術前及び術中の医用画像から患者固有の解剖構造を自動認識する。その結果を基に、手術の進行に伴って外科医が把握する必要がある解剖構造や解剖学的名称を抽出し、自動的に記述する手法を検討した。 (2) 仮想画像と実画像の解剖構造対応付け手法の実現:術前に撮影されるCT像等から得られる仮想内視鏡像と、術中に撮影される実際の内視鏡像を対応付ける手法を検討した。術前画像と術中画像から得られる解剖構造や解剖学的名称認識結果を用い、形状情報間の位置関係最適化による位置対応付けを行う。その結果を用いて異なる画像モダリティ上の解剖構造同士の対応付けを行った。 (3) 解剖学的構造物の対応付けに基づく内視鏡手術ナビゲーション手法の開発:(2)の結果を用いて、解剖学的構造物の対応関係を用いた内視鏡手術ナビゲーションを検討した。術中に観察及び操作を行っている術野に対し、対応付け結果を用いた解剖構造情報提示を行う。これにより、外科医が現在把握する必要がある情報を遅滞なく提示することを目指した。 (4) 解剖学的サーボイングの実現:手術状況の総合的理解、つまり術前及び術中の解剖学的構造認識結果や外科医による手術進行度等の自動認識結果を用い、内視鏡把持ロボットを制御する技術を検討した。内視鏡把持では外科医が注目する臓器を視野に捉えることが重要である。そこで特定の血管等解剖構造を常に注視するような内視鏡把持ロボット制御手法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「解剖構造ドリブン型内視鏡手術支援のための画像認識理解手法の開発」に関する各研究項目は予定通り進展している。 「解剖学的名称により記述された内視鏡手術プランニング自動生成法の開発」では、3次元的な解剖構造情報を基に、外科医が理解しやすい解剖学的名称を用いた手術計画記述方及び、コンピュータ処理に適した座標情報や解剖学的構造間の相対位置関係記述等を開発し、様々な対象に適した手術計画の表現法を提案した。「仮想画像と実画像の解剖構造対応付け手法の実現」では、深層学習を導入することで術前及び術中画像からの解剖構造自動認識精度を向上させた。そして解剖構造をボリューム画像表現及び表面座標表現により記述し、複数の解剖構造間のユークリッド距離最小化により最適な位置対応関係を求める方法を作成した。「解剖学的構造物の対応付けに基づく内視鏡手術ナビゲーション手法の開発」では、術中の内視鏡画像から操作対象の解剖学的構造物を自動認識し、その周辺の解剖学的構造とも合わせてナビゲーション情報を生成する手法を開発した。「解剖学的サーボイングの実現」では、腹腔鏡を把持するロボットを開発し、注視点の周りでロボットのアーム位置を自動制御するシステムを開発した。注視点周りでカメラ方向を制御可能とすることで、注目する解剖構造を常に視野に捉えて術中支援を行うロボットの実現に近づいた。 上記の成果は、今後の解剖学的サーボイングによって制御された手術支援ロボットの実用化と、その臨床での評価に向けた非常に有益なものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臨床の場における評価とそれに基づく手法改善を行う。内視鏡把持ロボットを臨床応用可能なレベルへと機能向上させ、ロボットを含む解剖構造ドリブン型内視鏡手術支援システムを実際の症例に基づき評価する。評価結果に基づきシステムの改善、機能追加を行い、システムの完成度を高める。
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