研究課題/領域番号 |
17H00876
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西保 岳 筑波大学, 体育系, 教授 (90237751)
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研究分担者 |
林 恵嗣 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (00431677)
藤井 直人 筑波大学, 体育系, 助教 (00796451)
本田 靖 筑波大学, 体育系, 教授 (20165616)
辻 文 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 准教授 (40707212)
小川 剛司 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70451698)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 暑熱 / 体温 / 換気 |
研究実績の概要 |
メントールは皮膚に存在する冷刺激受容器(TRPM8) を活性させ、皮膚温の変化なしに冷感をもたらす。先行研究では、メントールを全身または上半身の皮膚に塗布することで、運動に伴う体温上昇時の温度感覚や熱的快適性が改善されるが、その一方で、皮膚血流量や発汗量の増加といった体温上昇時の熱放散反応が抑制され、深部体温が上昇しやすくなると報告されている。皮膚へのメントール塗布による強力な皮膚における冷刺激 (<28°C)は、深部体温上昇時の換気亢進反応に影響を及ぼすかもしれない。もしそうであるなば、皮膚からの冷刺激受容器から中枢への感覚神経入力が換気亢進反応へ影響を及ぼすことになり、このような皮膚刺激を応用することによって、新たな熱中症対策方法開発へとつながると考えられる。そこで、上半身の皮膚へのメントール塗布が安静加温時の体温調節および呼吸循環応答に及ぼす影響を明らかにすることとした。 13名の健康な成人を被験者とし、常温環境下 (環境温25°C、相対湿度50%) において、上半身にメントール溶液を塗布する条件 (M条件) とコントロール溶液を塗布する条件 (C条件) の2条件下で、下肢温浴(42℃の温水)による安静加温を行った。 本研究で得られた主な結果は、1) 上半身の皮膚へのメントールの塗布によって安静加温時の温度感覚や熱的快適性が改善されたが、上半身へのメントール塗布は、体温上昇時の体温、呼吸循環応答に影響しなかったこと、2) 上半身及び局所部へのメントール塗布により、安静加温時の熱放散反応は変化しなかったことである。このことから、安静加温時の皮膚表面へのメントールの塗布は、温度感覚や熱的快適性を改善するが、体温、呼吸循環、熱放散反応などの生理反応には影響しないことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究が遂行でき、結果も興味深く、次年度(30年度)につながるものであったため。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄に障害を有するアスリートは、損傷部位以下に上位中枢からの命令が伝わらない、または不完全に伝わるために、皮膚血流量の増加や発汗といった体温調節機能が著しく損なわれている。そのため暑熱下運動時には、健常者と比較して深部体温が過度に上昇し、熱中症のリスクや運動パフォーマンス低下の程度が大きくなる。これまで、脊髄損傷者への熱中症予防策としてアイスベストの着用や、手掌・足部の冷却等が行われているが、皮膚感覚が麻痺している部位に対する身体外部からの冷却は、冷却の過不足の判断が難しく、冷却が過剰な場合には低温やけどなどの危険性があることから、冷却対象者の温度感覚に注意すべきことが指摘されている。また皮膚血流量の増加ができない部位の冷却は、熱交換の効率が悪く、脊髄損傷者への身体冷却方法として有効であるとは言い難い。 我々の研究室では冷気吸入に着目し、運動時の連続的な冷気吸入により暑熱下一定負荷運動時の深部体温上昇の程度が小さくなることを明らかにした。しかし、実用的な観点から考えると、運動間の休息時に冷気吸入の効果を検証する必要があると考えられる。そこで本研究では、2018年度に開発した10度付近の冷気を吸入できるシステムを用いて、運動間の冷気吸入が暑熱下間欠的運動時の体温、呼吸循環応答および温度感覚に及ぼす影響を検討する。
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