研究課題
脊髄に障害を有するアスリートは、損傷部位以下に上位中枢からの神経からの情報が伝わらない、または不完全に伝わるために、皮膚血流量の増加や発汗といった暑熱下において必要な体温調節機能が著しく損なわれている。そのため暑熱下運動時には、健常者と比較して深部体温が過度に上昇し、熱中症のリスクや運動パフォーマンス低下の程度が大きくなる。これまで、脊髄損傷者への熱中症予防策としてアイスベストの着用や、手掌・足部の冷却等が行われているが、皮膚感覚が麻痺している部位に対する身体外部からの冷却は、冷却の過不足の判断が難しく、冷却が過剰な場合には低温やけどなどの危険性があることから、冷却対象者の温度感覚に注意すべきことが指摘されている。我々の研究室では、新たな熱中症予防策として冷気吸入に着目し、運動時の連続的な冷気吸入により暑熱下一定負荷運動時の深部体温上昇の程度が小さくなることを明らかにした。しかし、実用的な観点から考えると、運動間の休息時に冷気吸入の効果を検証する必要があり、運動間の冷気吸入が暑熱下間欠的運動時の体温、呼吸循環応答および温度感覚に及ぼす影響を検討した。11名の健常者を対象に環境温35℃の環境制御室で、5分間の中強度一定負荷運動と3分間の休息を1セットとし、これを8セット実施し、この間欠的運動を休息時に冷気(10℃) もしくは室内空気(35℃) を吸入する2条件を行った。主な結果は、暑熱下間欠的運動時において、運動間休息時の10°Cの冷気吸入は1) 深部体温上昇を抑制する傾向を示したこと、2) 主観的な温度感覚および熱的快適性を改善すること、3) 冷気級によって気管支の炎症を起こさなかったこと、などであった。これらの結果から、休息間の冷気吸入は、安全でかつ暑熱下運動時の身体冷却手段として有効である可能性がある。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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