研究課題
この研究ではサルの初期視覚野と下側頭皮質の相互間および視覚野と視床が作る神経ネットワークが、意識的な色知覚にどのように関係するかを明らかにすることを目的としている。令和2年度は意識的な知覚とニューロン活動の関係を調べる有効な方法として、メタコントラストマスキングパラダイムを用いて、マカクザルが注視課題を行っている時に、円形の刺激と同心円状のリング刺激をさまざまな時間間隔で短時間呈示し、一次視覚野(V1)および下頭側皮質のニューロン応答がどのように変化するかを調べる実験を行った。この実験では多チャンネルリニア電極を用いて記録を行い、同時に多数のニューロン活動および局所電場電位を記録した。V1と下頭側皮質のいずれにおいても、多くのニューロンの発火は、平均として時間間隔がゼロの時に最も抑制され、知覚における抑制とは乖離が見られた。しかし、一部の細胞では数十ミリ秒ずれたタイミングの時に応答が最小となった。これらの細胞の活動が特に知覚に関係する可能性が考えられる。また網膜刺激と意識的知覚が乖離する別の現象として盲点における充填知覚に着目し、サルのV1で盲点を表現する部位からリニア電極で記録を行った結果、充填知覚時に低い周波数の局所電場電位の振幅が大きくなる新たな現象を見出した。また視床枕への視覚皮質領野からの入力様式を明らかにするために、マーモセットのFSTd, FSTv, MST, TE3にウイルストレーサーを注入し、視床枕内での投射先を同定した。その結果、FSTdとFSTvはいずれも外側視床枕核と内側視床枕核に投射するが、腹内側と背外側部にそれぞれ多く投射するという違いがあることが示された。いずれの領野も下視床枕核のほぼ全域に投射していた。一方、MSTからの投射は内側下視床枕核への投射が強いが、他の下視床枕核への投射は弱かった。TE3からの投射は上記の領野からの投射に比べて広く分布した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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