研究課題/領域番号 |
17H00897
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
小長谷 有紀 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 教授 (30188750)
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研究分担者 |
島村 一平 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20390718)
前川 愛 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (30506796)
大野 旭 (楊海英) 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40278651)
辛嶋 博善 国立民族学博物館, 北東アジア地域研究国立民族学博物館拠点, 特任助教 (60516805)
井上 治 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (70287944)
滝澤 克彦 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (80516691)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 写真 / 探検 / 宣教師 / モンゴル / 中央アジア / ユーラシア / 地域研究 / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
19世紀から20世紀初頭におけるモンゴルへのエクスペディション資料とりわけ画像コレクションについて、各国で整理にあたっている研究者たちと、国際共同研究を推進するための体制をさらに整備し、具体的な写真コンテンツの分析を開始した。 まず、日本モンゴル学会の日程に合わせて打ち合わせを行い、最大の資料保有機関が集中するサンクトペテルブルグで国際ワークショップを開催することに決め、同ワークショップを12月にコズロフ博物館で開催した。同ワークショップでは、写真1点ずつに対してタグ付け作業を行なった事例をもとに、タグ付け方針をチーム全体で共有することができた。また、コズロフが地理学者として自然環境に関する写真が大量に保管されていることを受けて、植生の長期的な変化を写真から読み解く試みを提示し、今後、別途、プロジェクトを形成することとなった。さらに、写真の撮影技術史という観点から写真内容を検討した結果、それぞれの写真コレクションは、撮影者の意図に加えて、当時のカメラの技術的特徴が反映されていることを具体的に了解することができた。 同ワークショップに先立ち、スウェーデンにおいて現地調査を行い、スウェン・ヘディン学術調査隊ならびにスウェーデン国教会の宣教師エリクソンの記録写真について、整理にあたっているアーキビストたちとの共同研究体制を構築した。とくにミッショナリーは長期滞在型であるため、その記録は民族誌に他ならない。これについては別途動いている限定的テーマのプロジェクトとの協業の成果でもある。また、蒋介石とともにモンゴル貴族が亡命した台湾には資料が運ばれたため、アジアにおけるモンゴル研究中心の一つであり、写真資料について調査したところ、蒙蔵委員会の廃止とともにかなり失われていることが判明した。 2年目として、初年度に作成したHPについて、検討結果を受けて大幅に刷新し、情報を大いに充実した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、国内研究会2回および海外での国際研究集会1回を実施し、横断分析のためのメタデータないしコンテンツに関するタグ付けについて、国際協業体制のもとで方針を共有することができた。とくに、ロシアにおいて国際会議を当初計画よりも前倒しで実施することによって、最も保有資料の多いロシアの整理作業を牽引することができた。ただし、ロシアでの国際会議を実施したことにより、モンゴルでの国際会議を開催することができなかったため、代えて国際モンゴル学会が東京で開催された際に、モンゴル国立図書館とりわけ写真担当アーキビストたち4名を招聘し、写真の整理および管理に関する技術移転を実施した。さらに、これまでの、フィンランド、ポーランド、ロシア、ハンガリーとの協業体制に加えて、スウェーデン、デンマーク、台湾との協業体制も構築することができた。 また、昨年度の検討結果に基づき、HPを刷新し、さらに情報を大幅に更新することができた。 なお、本科研プロジェクトがプラットホームとなって、別のプロジェクトとの協業や、新しいプロジェクトの形成などの動きが認められる。また、本科研を契機として形成された研究者ネットワークはすでに50人規模となっており、今後、より恒常的な組織として発展するのではないかと期待される。これらは、当初の計画以上の進展と言えるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
すでにデジタル公開されている資料は、公開のシステムごとに異なるシステムでメタデータが付されており、これらの差を超えて共通の方式でメタデータを新たに付与することはほとんど不可能である。そこで、それらについては、リンク付けにより、より簡便に検索ができるように支援する英文HPとする。とくに、年表や地図などのガイダンスを充実させる方策をとる。 一方、デジタル化されていないものについては、別途プロジェクトを形成するなどで支援し、本科研では行わないのは当初の方針通りである。本科研では、すでにデジタル化されている公開資料および未公開資料を扱う。公開資料については、公開情報を用いてより分析しやすいようにタグ付けを変更するなどして、本科研で用意したHPに格納できるシステムを活用する。また、後者については積極的に蓄積し、それらについて、書誌情報に相当するメタデータ、および写っている内容に関するタグ付けを行い、同HPに格納する。
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