研究課題/領域番号 |
17H00903
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
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研究分担者 |
染谷 昌義 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (60422367)
三嶋 博之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90288051)
柳澤 田実 関西学院大学, 神学部, 准教授 (20407620)
田中 彰吾 東海大学, 現代教養センター, 教授 (40408018)
長滝 祥司 中京大学, 国際学部, 教授 (40288436)
熊谷 晋一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (00574659)
岡田 美智男 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50374096)
直江 清隆 東北大学, 文学研究科, 教授 (30312169)
森 直久 札幌学院大学, 心理学部, 教授 (30305883)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 個別事例学 / 生態心理学 / 促進行為場 / アフォーダンス / 出来事の現象学 / デジタル人文学 |
研究実績の概要 |
本年度は、1)「知のエコロジカル・ターン」叢書刊行、2)事例学の理論的考察の推進、3)事例アーカイブの構築を軸として各人が研究を進めた。しかしコロナ禍により、それぞれの事例収集や実践に大幅な支障がでて、さまざまな変更を余儀なくされた。河野は、オンラインで子どもの哲学を実施し、参加者同士の役割をビデオで分析する作業を行ない、対話のデジタル人文学の構築を目指した。染谷は、身体の運動制御法の特別性を指摘し、身体性を科学する新たな方法(協調理論・自己組織化・環境を友とする制御法)への期待と可能性を探究した。三嶋は、間隙通過研究に関する体系的なレビューを行い、展望論文として公刊した。柳澤は、社会運動やカウンターカルチャーに関する情報を発信し、個々の画像に牽引されるアクセス数などのデータを採取するためのウェブサイトを(株)COOONと共同で構築した。田中は、個別事例学の応用として、(a)対面での会話とオンラインの会話を比較し、(b)末梢神経障害と中枢神経障害の個別事例を比較し、身体イメージの観点から運動学習過程に生じる違いを考察した。長滝は、開発した映像分析ソフトウェアによって、サッカーのゲーム映像の収集とその一次分析データを作成した。熊谷は、事例の個別性を分析する「当事者研究ワークシート」を用いたワークショップを企業対象にオンラインで行い、参加者のアンケートを分析した。岡田は、言葉を物忘れしてしまうロボット〈トーキング・ボーンズ〉とかかわった子どもたちの発話や行動を記録し、その促進行為場としての機能に関する分析を行った。直江は、Skillと伝統について、方法論の整備を図り、収録データの解析に反映させ、研究の取りまとめを進めた。森は、ZOOMで行われたアクティブラーニング型授業において、ユーザーのコミュニケーション様式と学習環境整備が発達する過程を観察し、新しい学習環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対人的な関係を実験や実践を研究のデータとして用いることの多い本研究は、2020年のコロナ禍によって大きな影響を受けながらも、それぞれが限られた対面の機会やオンラインでの代替方法で苦心しながら研究を進めた。その中でも、本研究の最終的成果物である、生態学的現象学の単著シリーズは、コロナ禍により予定がやや遅れたが、ほぼ原稿が出揃い2021年度中には東京大学出版会から順次発刊できる見通しとなった。デジタルな事例アーカイブの構築は、それぞれが推進し、これまでのデータを解析し、その分析から研究を各人のテーマに沿って発表を行なった。例会を2度開催することにより、開発したアプリケーションの使用法と改善点について議論を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の目標として、5年間の総括として「知のエコロジカル・ターン」叢書を東京大学出版会より出版し、3月にこの研究全体を総括する公開シンポジウムを開催する。2021年度もコロナ禍の影響については予想し難いが、通常通りの対面でのデータ収集には困難があると予想される。また、開発したアプリをよりそれぞれの研究に適した形のアプリへと発展させるために、 研究メンバーと相談の上ヴァージョンアップを検討する。染谷は、「協調運動制御論」「情報にもとづく知覚論」「動作のメッシュワーク」とANT論、「環境を友とする制御法(陰的制御則)」の理論的見解をもとにして哲学的身体論を展開する。三嶋は、環境配置の「行為促進場」としての機能について検討するため、歩行による間隙通過時の視線行動に関する諸事例について検討する。柳澤は、差別に基づいて人が人に暴力を振るう状況を、促進行為場という観点から分析・考察する。田中は、生態学的現象学の観点から「自己」の経験を記述し、社会的環境の起点としての「他者」を自己との関連において考察する。長滝は、開発したアプリを使用した映像資料・言語記述資料に基づく、サッカーのゲーム分析とコーチングのディスコース分析を行う。熊谷は、大学のFDとしてワークショップを行い、教育研究環境の心理的安全性や、PIの謙虚さが向上するかどうかを検討する。岡田は、促進行為場の研究の一環として、人とロボットとのインタラクション場面における人側の能動的、支援的な振る舞いを分析する。直江は、技術・技能に関する促進行為場の形成について、実証的な研究を行う。森は、三人以上の会話にうまく参加できず疎外感を味わっている個人が、参加に習熟するプロセスを微視発生的に検討する。佐古は、次年度から研究分担者となるが、記号論的観点から、哲学対話や当事者研究など様々な会話実践をつなぐ土台となる対話理論の研究を進める。
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