研究課題/領域番号 |
17H00907
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
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研究分担者 |
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00298118)
鳥山 祐介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (40466694)
杉浦 秀一 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50196713)
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (50271672)
下里 俊行 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)
坂庭 淳史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80329044)
望月 哲男 中央学院大学, 現代教養学部, 教授 (90166330)
金山 浩司 東海大学, 創造科学技術研究機構, 講師 (90713181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロシア思想 / 宗教思想 / 科学思想 / 人文科学 / 超越性 |
研究実績の概要 |
2018年度は、夏と春に2回の全体会合を持った。第1回会合(8月20日)では、若手研究者を協力者として招き、「『罪と罰』におけるドイツのイメージ」、「1840年代における「現実」の探求─反省と直接性という観点から」の2報告がなされ、19世紀のロシアにおける西欧、とりわけドイツ語圏の思想的言説の役割をめぐって、活発な討議が行われた。第2回会合(3月28-29日)では、「19世紀ロシア正教会の対外関係とフィラレート(ドロズドフ)」、「隠された偶然――「運命論者」を中心とする『現代の英雄』論」、「聖山アトスの修道士パルフェーニーのロシア、モルダヴィア、トルコ、聖地遍歴と旅の物語」、「ノヴゴロツェフの法学に関する一考察」、「ロシア哲学史研究の最近の動向」の5つの報告がなされ、19世紀のロシア正教会と中近東を中心とする東方世界との外交関係の持つ文化史的意味や、ロマン主義時代の文学における主体と偶然性のテーマとその思想史的コンテクスト、古儀式派にかかわる物語文献の持つ文化史的役割、ロシア法思想における自然法の学説に与えたカントと新カント派の影響などについて、興味深い議論がくりひろげられた。 代表者・分担者による関連研究業績としては、ソ連科学思想に関する著書1、欧文論文2本(カラムジン、チャアダーエフ、チュッチェフに関するもの)、日本語論文3本(古儀式派、人文科学方法論に関するものなど)、学会発表等6本を数え、またバフチンの未邦訳草稿の翻訳と解説なども市販の雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者および各分担者が、「超越性」と「生」の接続というテーマをそれぞれ多角的に追究し、2回の全体会合や、国内外の学会等での個別の研究発表、論文集や学術雑誌への投稿、さらに商業雑誌やネット配信などを通して、数多くの成果を世に出し、広く社会に還元することができたといえる。 具体的には、代表者、分担者による関連論文や解説が10本程度、内外の学会発表、講演、インターネットでの配信などによる関連テーマの成果発信が11回ほどあり、2年目の成果としてはまずまずのものであろうと考えられる。また2回の全体会合での報告と長時間にわたる討議によって、メンバーのあいだでの問題意識の共有もより確かなものになった。 さらに、全体会合では、博士学位取得直後の若手研究者や周辺領域の専門家にも積極的に参加してもらうように心がけ、次年度以降の研究の層をより厚くし、ロシアの思想史を、ジェンダー論や批評理論、メディア理論、イメージ論等の新たな見地から再考するための努力もおこなってきた。こうした努力の結果、本研究会は、国内のロシア思想史関係の研究会のなかでも、最も多彩で幅広く有能な人材が集まったもののひとつへと成長してきた。 こうした状況を考慮すれば、本研究課題の進捗状況は、目下のところおおむね順調というべきである。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでの方法を継続し、参加メンバーによる基礎資料収集、資料読解をもとにした個別的研究をさらに推し進め、各種学会、学術誌、著書、講演、配信等による成果の公開を心がけるともに、年2回の全体会合をつうじて、個別的研究の成果を本研究の大きなパースペクティヴのなかに位置づけて共有し、ロシア思想史の批判的再構築に向けた議論を活性化して、ロシア思想研究の新たな視点や枠組みの獲得を目指したい。 また、引き続き研究協力者として有能な若手研究者を発掘し、カバーする分野を広げるとともに、新たな方法論や隣接領域との協力をさらに推し進めていく。 資料調査では、海外(主にロシア、フィンランド等)における一次資料収集を中心とし、また、ロシア、ポーランド等で定期的に開催される思想史系の国際学会への参加も継続する。こうした海外における活動のなかで知遇を得た海外の専門家にも情報提供者やアドバイザーとして参加していただき、都合がつけば日本への招聘や、講演、国際シンポジウム、ワークショップなどの開催、論文の寄稿などを今後企画・検討する。 さらに、本研究で得られたロシア思想史の再構築の大きな成果を広く社会や学界に還元するために、論集の刊行を企画する。本研究の研究代表者、研究分担者はすでに、本研究のテーマにかかわる多くの優れた業績を蓄積しており、これらを従来の思想史研究の批判的再構築というまとまったコンセプトのもとにまとめて刊行すれば、我が国におけるロシア思想史研究の水準や風景は、多くの点で刷新されるのではないかと考えられる。今後はまず、これまでに蓄積された論文等の業績を編集することで、第一論集の編集・刊行をめざし、将来的にはこの後さらに4年のあいだに蓄積されるであろう業績を吟味して編集し、第二論集、第三論集の編集・刊行も企画し、ロシア思想史研究再構築の新たな流れを作り出していきたい。
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