研究課題/領域番号 |
17H00910
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
天野 文雄 京都造形芸術大学, 舞台芸術研究センター, 教授 (90201293)
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研究分担者 |
柳 美和 (やなぎみわ) 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (10441362)
森山 直人 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20343668)
内野 儀 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (40168711)
岩村 原太 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (50794822)
田口 章子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (80340529)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 芸術学諸学 / 伝統 / 身体 / テクノロジー / 演劇 / 教育 / ダンス / 劇場 |
研究実績の概要 |
京都造形芸術大学舞台芸術研究センター(以下、「センター」)、及び同大学共同利用・共同研究拠点(以下、「拠点」)とも連携しつつ、下記の研究活動を実施した。 (1)「ラボラトリー機能」構築の理論的検証作業として、その基盤となるアートマネジメント研究、ドラマトゥルク研究の先行研究をふまえつつ、①基礎資料の収集、②先行事例の検証、③現地調査を実施した。①については、「劇場を活用した創造のプロセス」に不可欠な演劇史上に残る歴史的作品の記録映像(DVD)を約40本購入したほか、「センター」に手付かずのまま保存されていた同様の記録映像(VHS約200本)のDVD化作業を集中的に行った。②については、「拠点」と「センター」の連動により「創造のプロセス」が生み出した本格的舞台作品である『繻子の靴・全曲版』(上演時間約8時間)の全過程を、4回の研究会(非公開)を軸に客観的に検証する作業を実施し、③については、国内外の舞台芸術祭(7箇所)、及び韓国・ソウルにおける教育機関と劇場制度の連携状況を現地調査し、事後報告会とレポートにより共有した。 (2)「ラボラトリー機能」構築の実践的モデル化の作業として、《視点2:身体》に関する以下2つ(①②)の劇場実験を伴うプロジェクトを実施した。①「サミュエル・ベケットを〈展示〉する:もうひとつの劇場空間に向けて」は、小崎哲哉氏を研究協力者に迎え、劇場ホワイエを活用した実験的な展示空間の創出と、ベケットに関する最新の研究成果を発表するレクチャー(いずれも一般公開)を実施した。②「ダンスの創造的行為を巡って」は、山田せつ子氏を研究協力者に迎え、演劇とダンスのジャンル越境的な実験作品の劇場を使った創作(一般公開)及びそのための連続研究会を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から若干の変更はあったが、全体として順調に初年度を終えることができた。 (1)「ラボラトリー機能」構築の理論的検証作業については、連携研究者との共同研究会は予定回数をやや下回ったが、その分、現地調査に十分な予算と時間を割き、基盤研究として予想以上の成果を挙げた。国内では、東京、横浜、名古屋における規模も機能も異なる3つの舞台芸術祭を、京都と比較しながら詳細に調査することができ、国外については、規模と歴史のかなり異なる3つの舞台芸術祭(パリ、シドニー、バンクーバー)を多角的に検証することができた。とりわけ、名古屋の「サウンドプラットフォームパフォーマンス2018」とバンクーバーの「PuSh国際舞台芸術祭」は、比較的小規模ながらも、舞台芸術と音楽の領域横断性に主眼を置いたイベントであり、舞台芸術作品の未来のあり方とその創造プロセスの構築をめぐって、多くの示唆を得ることができた。 (2)「ラボラトリー機能」構築の実践的モデル化の作業については、軽微な変更はあったものの、2度の劇場実験を通じた「創造のプロセス」研究の公開発表はほぼ予定通り行われ、期待以上の成果をあげた。本報告書「6」-(2)の①は、世界演劇史を代表する劇作家ベケットをテーマとした創造プロセスの構築、②は、京都・関西圏の演出家・ダンサー、及び研究者との継続的な協働作業による創造プロセスの構築がそれぞれ主眼となっていたが、いずれにおいても、劇場空間を大胆に活用した実験的なプロセスが生成され、将来の「オープン・ラボラトリー」創設に関する、タイプの異なる2つの貴重な事例を得ることができた。また、やなぎを中心として次年度実施予定の「モバイルシアタープロジェクト」に関する効果的な準備作業を実施できたことも収穫であった。東アジアとの連携に関しては、諸事情から「センター」主催の事業とし、形式上、本研究とは別立てで行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、「ラボラトリー機能」を主たる目的とする「オープン・ラボラトリー」の創設を将来的な目的としている。そのよう観点で、初年度の収穫は、「センター」と「拠点」、及び必要な研究協力者との研究協力が、これまでの研究実績をベースにしつつ、きわめてスムーズかつ効果的に行うことができたことである。かつ、本研究の主たる先行研究であるアートマネジメント研究やドラマトゥルク研究に通じた研究補助職員(2名)を雇用することができ、さまざまな切り口を持つ個別プロジェクトを包括的・客観的に検証するチームを、天野の統括の下で立ち上げることができ、「ラボラトリー機能のモデル化」という作業を推進する基盤整備がほぼ完了したことも収穫である。今後の課題としては、初年度の研究成果をもとに、「オープン・ラボラトリー」の具体的なモデル化作業(第1段階)に着手することがあるが、その点は、「モデル化のための検証作業」のチームを機能させつつ、2年目に実施していく重点課題となるだろう。 劇場をベースにした具体的な実践研究、及びその基盤的研究については、初年度は準備段階にとどまった《視点1:伝統》、《視点3:テクノロジー》の芸術創造を見据えたさらなる広がりを探していくことになる。 なお、研究成果の発表に関しては、すでに「センター」の機関誌『舞台芸術』等を通じて部分的な公開が実現しており、かつまた、「劇場実験」という本研究に特徴的な方法は、公開性を前提としている。その上で、2年目は、最終年度を見据えた研究成果のまとめと、学術雑誌等での研究成果の公開方法をより幅広く検討していく。
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備考 |
本研究に関連するウェブサイトとしてこの3つがある。
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