研究課題/領域番号 |
17H00913
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
川端 康雄 日本女子大学, 文学部, 教授 (80214683)
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研究分担者 |
中井 亜佐子 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (10246001)
遠藤 不比人 成蹊大学, 文学部, 教授 (30248992)
河野 真太郎 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (30411101)
大貫 隆史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40404800)
西 亮太 中央大学, 法学部, 准教授 (60733235)
越智 博美 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90251727)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 産業文学 / フェミニズム / グローバリズム / 脱産業化 / 精神分析 / Raymond Williams / William Morris / George Orwell |
研究実績の概要 |
研究2年目に当たる本年度(2018年)の調査・研究は、初年度に実施した2度の国際会議および個々の調査を踏まえ、レイモンド・ウィリアムズ研究会での発表および討議と並行して、各自が分担した考察対象に即して調査を行った。 川端(代表者)は、全体を統括しながら、ジョン・ラスキンから、ウィリアム・モリス、ジョージ・オーウェルへと続く英国における批判的産業文学の系譜をロンドンでの資料調査をもとに考察した。中井(分担者)は、1970年代から80年代イギリスで行われた「家事労働に賃金を」および「女性のストライキ」キャンペーンについて、2017年度末に収集した資料をもとに理論的に考察した。遠藤(分担者)は、ロンドンでの精神分析関連の資料調査と、精神分析が近代的な諸言説に介入する、その理論的かつ政治的な可能性についての研究成果を、口頭発表、論文で公表した。河野(分担者)は、これまでの研究結果を日本英文学会大会シンポジウムで発表した。また、北ウェールズにおける環境保護運動、反原発運動の現状の調査と研究者交流を行った。大貫(分担者)は、歴史家で小説家のダイ・スミスによるトニーパンディ暴動論を継承するかたちで、産業労働者階級の経験がいかにしてコミュニティの想像力と関係しうるか、考察を進めた。西(分担者)は、脱産業化の経験として、戦後日本炭鉱地域、とりわけ北九州の筑豊炭鉱地帯におけるサークル運動について、森崎和江および谷川雁の著作と活動に重点を置いて調査及び著述を行った。また、1980年代の英国におけるソーシャリズムとエコロジーについても、ロンドンで調査を行った。越智(分担者)は、米国アパラチア地域の表象と産業文学について、アメリカ議会図書館でのドス・パソス関連資料等の調査を踏まえて考察し、石炭産業と文学の関連についてさらに掘り下げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は代表者および分担研究者の個々の調査と、研究会での研究成果の発表と討議によって研究を進めるという当初の計画を実行できた。 代表者と分担者者の全員が所属しているレイモンド・ウィリアムズ研究会では2018年6月3日にDr Sean Matthews(ノッティンガム大学)を招いてセミナー(Raymond Williams and Decolonisation)を開催した(於日本女子大学目白キャンパス)、同12月16日にはDr Dougal McNeill(ヴィクトリア・ユニヴァーシティ・オヴ・ウェリントン)を招き、近刊の編著British Literature in Transition, 1920-1940 (Cambridge UP, 2018)について討論を行った(於中央大学駿河台記念館)。 また2019年2月22日に斎藤幸平大阪市立大学准教授のマルクスとエコロジー批評をめぐる単著について大阪・梅田にて合評会(「エコロジーとソーシャリズム―Kohei Saito, Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economyを読む」を開催、2018年度のドイッチャー賞を受賞した斎藤氏の著作をめぐって活発で有意義な討議が行われた。 さらに2019年3月5日には「オーウェル『一九八四年』とディストピアのリアル―刊行70周年記念シンポジウム」(主催:日本女子大学文学部・文学研究科学術交流企画)を共催した(於日本女子大学目白キャンパス)。 概ね年に一号刊行している研究誌『レイモンド・ウィリアムズ研究』については、平常号(第8号)を2019年3月に発行した。そのなかに上記2018年12月16日開催の研究会の発表内容を掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に実施した研究会、シンポジウムのうち、斎藤幸平大阪市立大学准教授のマルクスとエコロジー批評をめぐる単著についての合評会、および「オーウェル『一九八四年』とディストピアのリアル―刊行70周年記念シンポジウム」については、2019年度に刊行予定の研究誌『レイモンド・ウィリアムズ研究』次号においてプロシーディングズ等のかたちで記録を残す計画で進めている。 2019年度9月にイギリスから研究者(Dr. Daniel Williams, スウォンジー大学教授)を招聘して九州と東京でシンポジウムを開催するほか、本研究の代表者・研究分担者の全員が所属するレイモンド・ウィリアムズ研究会の開催の頻度を(隔月に1回程度に)上げる予定である。さらに、2019年度は本研究課題に関わる重要な批評家ジョン・ラスキンの生誕200年に当たることから、一般財団法人ラスキン文庫と提携してシンポジウム開催に向けて調整中である。 国際的な学術協力については、レイモンド・ウィリアムズ研究のウェールズにおける拠点であるウォンジー大学、ウィリアム・モリス研究の拠点であるロンドンのウィリアム・モリス協会、ラスキン研究の拠点でラスキン・ライブラリーを附置施設として有するランカスター大学の研究者たちとのコミュニケーションをより密にしていくように図る。
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