研究課題/領域番号 |
17H00933
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋田 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10175789)
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研究分担者 |
山口 育人 奈良大学, 文学部, 准教授 (20378491)
菅 英輝 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60047727)
浅野 豊美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60308244)
前川 一郎 創価大学, 国際教養学部, 教授 (10401431)
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70597939)
KROZEWSKI GEROLD 大阪大学, 先導的学際研究機構, 教授 (20772982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 石油危機 / 1970年代 / アジア国際秩序 / 世界システム / 工業化 / 農業開発 |
研究実績の概要 |
1.当初計画に基づいて、4回の定例研究会を開催した。最初の2回は、5年間の研究計画全体および役割分担の確認を行なった。その討議を通じて、(1)毎年最終回の定例研究会は、国内外での国際ワークショップとする、(2)2020年3月にワシントンD.C.で、2021年3月にヨーロッパでワークショップを行い、研究成果の総括は、2021年8月の世界経済史学会(開催地・未定)でパネルを組織することを決定した。 2.第二回研究会(神戸)で、1970年代の日本の経済協力とアジア開発銀行(ADB)の関係を議論した。ADBの歴代総裁は財務省(大蔵省)出身の日本人が占め、日本政府の東北アジア(韓国)、東南アジア(ASEAN諸国)への開発援助、特にインフラ開発への資金援助と技術協力を推進する際に、ADBと緊密な連携が見られた点を確認した。しかし、マニラのADB本部にあるArchivesは公開されていないため、ADBの第一次史料を使った研究が困難であることが判明した。 3.2017年12月末に、台湾の政治大学文学院、中央研究院近代史研究所・台湾史研究所と合同で、1970年代のアジア国際秩序を再考する国際ワークショップを開催した。アジアNIESの成功例としての台湾の経済成長が、米日両国の経済援助を巧みに利用した現地側のイニシアティヴで実現した点を、台湾化学工業の発展を事例に検証した。 4.2018年3月に、3名の外国人研究者を招いて、1970年代石油危機の世界史的意義を再考するワークショップを開催した。その結果、(1)70年代の二度の石油期により、1950年代後半から60年代に影響力を有した非同盟勢力(グローバル・サウス)が分裂・崩壊したこと、(2)特に1979年の第二次石油危機がソ連圏に打撃を与え、冷戦終焉の決定的な要因になったことを確認した。レーガン政権の軍拡路線によるソ連崩壊に代わる、新たな見解を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.共同研究における分担者の担当課題、その相互連関性、研究推進にあたって利用可能な第一次史料の所在について、旅費を使った現地史資料調査を通じて確認することができた。当面は、伊英米両国の国立公文書館、世界銀行史料室、日本の外交史料館、援助受け入れ側として、韓国、インド、クウェートの現地公文書館等に所蔵の各種文書が有益であることが判明した。二年次以降、それらの諸史料を相互に組み合わせたmulti-archivalな共同研究を展開する準備が整った。 2.東南アジアの事例研究を補足するために、マレーシア財政史研究の佐藤滋氏の協力を得ることにした(研究分担者)。また、石油危機を乗り切って躍動する日本や東アジアNIES諸国の比較事例として、新たに、70年代末に累積債務危機、債務不払いに陥ったラテンアメリカ諸国(メキシコ、ブラジルなど)を考察の対象に加えることにした。第2年次に、現代ラテンアメリカ経済論の専門家を招いて研究会を行う予定である。 3.他方、当初から予定していたアフリカの事例研究は、分担者2名との合議で、まずは徹底した二次文献調査を行うことに変更した。その補完として、アフリカ経済史・グローバル経済史研究の専門家である、ケンブリッジ大学のGareth Austin氏との協力を強化する。2018年3月のワークショップに招聘した3名の外国人研究者とは、引き続き研究協力を維持していく。 4.国際金融制度の変容、「民営化」の実態に迫るため、日本経済史が専門の岸田真氏を分担者に加えて、副代表の山口育人氏と共に、欧米の諸史料館や日本の研究機関(アジア経済研究所等)で広範な統計データの収集を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、第二年次の共同研究を以下のように推進する: 1.1970年代の石油危機により、世界システム・世界経済がいかに変容し、21世紀現代世界の原型が形成されたのか、東アジア、南アジア、アフリカの事例を双方向的に比較して考察する。ただし、アフリカの考察は、研究分担者の都合により東アフリカ地域に限定し、新たな比較対象地域として、1970年代後半の南米(ラテンアメリカ諸国)を加える。 2.東南アジア諸国を含む「広義の東アジア地域」の急激な工業化を通じた経済的再興(東アジアの奇跡)はなぜ可能になり、南アジアの農業開発「緑の革命」が成果を挙げたのか、1970年代の世界銀行によるアジア・アフリカ諸地域に対する経済援助の拡大と方針の転換(プロジェクト融資から社会支援へ)や、主要国の政府開発援助(ODA)、民間投資の動向と関連づけて考察する。 3.石油危機を通じて国際金融体制(レジーム)は、国際通貨基金(IMF)・世界銀行を中心としたブレトン=ウッズ体制から、「民営化された国際通貨システム」へといかに変容したのか、オイルマネーの行方に着目して考察する。
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