研究課題/領域番号 |
17H00933
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋田 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10175789)
|
研究分担者 |
山口 育人 奈良大学, 文学部, 准教授 (20378491)
菅 英輝 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60047727)
浅野 豊美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60308244)
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70597939)
岸田 真 日本大学, 経済学部, 准教授 (40317277)
佐藤 滋 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (90616492)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | グローバルヒストリー / 石油危機 / 工業化 / 農業開発 / 国際開発金融の民営化 / オイル・マネー / アフリカの停滞 / アジア開発銀行 |
研究実績の概要 |
1.当初計画に基づいて、国際ワークショップを含めた4回の研究会、加えて、早稲田大学イスラム学研究センターとの共同企画ワークショップ、合計5回の会合で議論を重ねた。2.第1回(6月)および第2回(12月)の定例研究会では、本プロジェクトのキイとなる以下の4つの主題と、役割分担を確定した:(1)国際開発金融の「民営化」とオイル・マネー;(2)東アジア・東南アジア諸国の工業化と石油危機、経済援助;(3)南アジアの農業開発(緑の革命)と石油危機;(4)アフリカの経済開発の停滞と石油危機。3.2019年1月6日「アジア世界史学会第四回国際会議」AAWH International Conferenceと、2019年3月11日The 12th Indo-Japanese Dialogue (Jawaharlal Nehru University, India)において、"The Transformation of International Order of Asia in the 1970s"と題する国際ワークショップを開催した。特にJNUでの会議では、(1)インディラ・ガンディー政権下における開発戦略の変更(重工業化から農業開発へ)、農村‐都市インフォーマル部門経済の発展の重要性を確認した。また、(2)冷戦体制のもとでのアメリカのアジアにおける外交戦略の重点シフト(南アジアから対中国交正常化重視へ)、それに伴う開発金融・経済援助の変容(世界銀行やアジア開発銀行などの国際機関の比重増大、アメリカの政府開発援助削減)、それらが国際秩序に与えた影響を明らかにした。 4.早稲田大学イスラム研究センターとの共同ワークショップでは、第二次大戦後の国際金融と「非公式帝国」論との接合可能性、基軸通貨ポンドの影響力(スターリング残高)と中東産油国との関連性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.共同研究の第二年次において、2回の中規模の国際ワークショップを開催して、特にアジア太平洋地域の研究者と、1970年代の国際経済秩序について集中的に意見交換を行うことができた。その討議を通じて、世界システム、世界経済の転換点としての1970年代の歴史的意義を改めて確認すると共に、今後の国際共同研究の実施に目途がついた。
2.二度の石油危機を経て政治経済構造が変容する過程で、東アジア諸国の経済成長の加速、いわゆる「東アジアの奇跡」(East Asian Miracle)の基盤が形成された点を確認できた。アジア太平洋地域の独自性・特異性を解明するためには、双方向的比較(bilateral comparison) の手法による地域間比較研究が必要であることが一層明確になり、方法論でも大きな進展が見られた。
3.比較対象地域として、慶応大学の安井伸氏をお招きして、1970年代ラテンアメリカの政治・経済の変容、開発戦略転換の模索の事例を検討した。その結果、アジア諸国とは異なり、石油危機を通じて、ブラジル・アルゼンチン・メキシコの地域大国は、アメリカの民間銀行を通じて多額の融資を受けたこと(ユーロ・ドラーの還流)、その結果、短期債務が急増して1980年代に累積債務危機に陥ったことを確認できた。ラテンアメリカ諸国にとって、1970年代は、経済開発の絶好のチャンスを生かせなかった10年、「忘れられた10年」となったが、対照的に経済開発政策で成果をあげた東アジア・東南アジア諸国とのさらなる比較対照研究の必要性を認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、第3年次(2019年度)の研究を進めるとともに、2020年3月にワシントンDCのウィルソン・センターで計画していた国際ワークショップが、コロナ禍で開催延期となったため、代替で討議可能な機会を設定する予定である。 1.最終の研究成果発表の機会として、2021年8月にパリで開催予定の、世界経済史会議(WEHC)でパネル報告を実現する。幸い、第一次公募で、パネル提案が採択された。 2.グローバルヒストリーの手法として「双方向的比較」を本格的に取り入れ、1970年代の東アジア、南アジア地域とアフリカの経験を相互乗り入れで比較検討を行う。特に、東アフリカに着目し、分担研究者でカバーできない地域なので、研究協力者をお願いしているケンブリッジ大学のGareth Austin教授と、立命館大学の前川一郎氏の全面的な協力を得て、1970年代のケニア、タンザニア、さらに西アフリカのガーナの事例を比較検討する。現代アフリカとの比較では、世銀OBの橋本日出夫氏の協力を得る。 3.国際開発金融については、世銀の対日本向け借款で業績を重ねられている、成城大学の浅井良夫教授の協力を得て、1950-60年代の対日融資が終了する過程と、19070年代の状況を比較検討する。
|