研究課題/領域番号 |
17H00934
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30335400)
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研究分担者 |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 准教授 (00540379)
渋谷 聡 島根大学, 法文学部, 教授 (30273915)
中本 香 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30324875)
中澤 達哉 東海大学, 文学部, 准教授 (60350378)
佐々木 真 駒澤大学, 文学部, 教授 (70265966)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
近藤 和彦 立正大学, 文学部, 教授 (90011387)
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90710848)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 近世史 / 君主政 / 主権 / 主権国家 / 礫岩国家 / 複合君主政 / 主権国家体制 / 国家形成 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる平成29年度は、本研究に参画する研究分担者・連携研究者が各自の研究を進める一方で、歴史的ヨーロッパにおける主権に関する研究動向を共有する目的にから三度の研究会を開催した。平成29年6月3日に大阪で開催された第一回研究会では、各自が研究対象とする地域での主権理解について報告がなされ、本研究の初年度の課題を各地域間で比較検討を可能とする「補助線」の模索に置くことが確認された。これを受け、同年11月4日に京都で開催された第二回研究会では、本研究に先立つ「歴史的ヨーロッパにおける複合政体のダイナミズムに関する国際比較研究」以来、協力関係にあるJ.モリル氏らが刊行したMonarchy tranformed: Princes and their Elites in Early Modern Western Europe(Cambridge UP, 2017)を検討し、今日のヨーロッパ歴史学界における君主政への視座の一例を確認した。これを踏まえて2018年3月にはこのJ.モリル氏を招聘し、同年3月10日に東京で"Peoples and Revolutions: Rethinking Seventeenth-Century British History"と題したセミナーを、同年3月13-15日に長崎でモリル氏らとのワークショップを第3回研究会として開催した。各々の地域における主権の内実は、Monarchy tranformedや『礫岩のようなヨーロッパ』が示すように、各々の地域の政治社会でアクターとなった者たちの行動と理解によって多様である。ボダンが提起した主権の議論とイングランドの政治社会における主権の内実の異同を示したモリル氏らとの意見交換を通じ、本研究は、政治思想史研究と歴史学研究を架橋する総合的研究として「批判的再構築」を推進する視座を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、歴史的ヨーロッパの情況性を背景に変動を繰り返した君主政の姿に着目し、「王と政治共同体の統治」と称される権力の共有状態を背景としながら、主権概念の批判的再構築を図ろうとするものである。平成29年度は本研究の初年度として、本研究に参画する研究者がそれぞれが分担する地域の研究動向を持ち寄りつつ、「主権概念をめぐる従来の研究動向のなかで問題点がどこにあるのか」、「比較研究を推進するための「補助線」はどのように設定されるべきなのか」など、本研究を共同研究として推進するための問題点が検討された。最新のヨーロッパ歴史学界における君主政研究の動向と今年度招聘したJ.モリル氏との意見交換を踏まえた、これらの検討事項は、近世ヨーロッパにおける君主政の実態に即して主権概念を再構築しようとする本研究の出発点にあたり重要な観点を含むものとなった。とりわけ、J.モリル氏らがMonarchy tranformed(Cambridge UP, 2017)において君主・エリート関係の再編を背景に君主政の変容を論じようとした際にキーワードとした「協働関係」は、『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社、2016年)における「王と政治共同体の統治」という指摘と通底する視点である。これを一例として本研究の問題設定は国際的な共同研究として拡張しうる可能性が確認されるとともに、主権者たる君主権力の実現は各地域の政治的アクター間における「協働関係」の構築過程から再検討されるべきといった、本研究を主権概念の「批判的再構築」とするために必要な視座を得ている。これらの知見は次年度以降に各々の研究者が自らの分担する地域を検討する際において研究の方向性を与えるものともなろう。平成29年度に得られたこれらの成果に鑑みて、本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成29年度の研究成果を踏まえ、今後は以下の三点の方針に従って推進される。(1)本研究に参画する研究者は、平成29年度に議論された共同研究を成立させる「補助線」を意識しながら、各自が分担する地域を対象に主権概念の再検討を進める。(本研究に参画する研究者のなかで協議したうえで海外に派遣し、研究遂行上必要となる史料調査に加えて、平成 31 年度以降に開催する国際ワークショップにむけ関連する現地研究者と意見交換を行う。)(2)各々の研究者が進めている研究を持ち寄ることで、各々の研究の進捗を確認するとともに、そこから得られた新たな知見を本研究に参画する者が共有するために、平成 30 年秋と平成31年春に大阪ないし東京で研究会を開催する。(3)本研究で得られた知見を、歴史学ならびに隣接する人文学・社会科学分野へ公開して学界に総合的な議論を喚起する目的から、平成 31年春の研究会の一部は、平成29-30年度の活動で得られた本研究の中間報告を兼ねて外部の研究者に成果を公開し、そこで得られた西洋史と隣接する諸分野の研究者からの意見を本研究にフィードバックさせ、本研究の計画後半に向けた布石とする。
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