研究課題/領域番号 |
17H00934
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30335400)
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研究分担者 |
近藤 和彦 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (90011387)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
渋谷 聡 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (30273915)
佐々木 真 駒澤大学, 文学部, 教授 (70265966)
中本 香 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30324875)
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 准教授 (00540379)
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90710848)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 近世史 / 君主政 / 主権 / 主権国家 / 礫岩国家 / 複合君主政 / 主権国家体制 / 国家形成 |
研究実績の概要 |
本研究の2年度目にあたる平成30年度は、本研究に参画する研究分担者・連携研究者が各自の研究を進める一方、歴史的ヨーロッパにおける主権に関する研究動向を共有する目的にから3度の研究会を開催した。平成30年9月29日と平成31年2月2日に大阪で開催された研究会では、この研究に参画する研究者が、各自の研究対象とする地域での主権理解について報告がなされた。また、計画当初予定されていたヨーロッパからの研究者招聘については予定されていた研究者の都合から実現できなかったものの、その代わりとして平成31年3月27日ー29日には対馬にて研究合宿が開催され、ヨーロッパにおける主権概念を北西ユーラシアにおける権力概念として相対化する目的に立ち、東ユーラシアにおける権力概念と対比させる検討が進められた。平成30年度の研究会は、初年度以降の本研究の活動を試行的に公開した2018年度歴史学研究会大会合同シンポジウム「「主権国家」再考」の成果を踏まえて適宜開催されたものである。このシンポジウムでは、ヨーロッパにおける主権概念は、『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社、2016年)でまとめられた同時代の政治的・文化的情況に即した複合的な政治編成の実態を背景としながら多元性をもって再検討されるべき点が披瀝されたが、このシンポジウムにおける外部の研究者との意見交換を踏まえながら進められた本年度の研究活動では、主権概念の批判的再構築をユーラシア大陸レベルで比較する際、当該地域内部における権力構造の実態を対外関係の変化と連動させながら検討する視座こそが、初年度に求められた比較の「補助線」とすることが有効であることが確認され、研究計画3年度目以降の比較研究に向けた具体的な指針が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、歴史的ヨーロッパにおいて政治的・文化的情況を背景に変動を繰り返した君主政の姿に着目し、「王と政治共同体の統治」と称される権力の共有状態を背景としながら、主権概念の批判的再構築を図ろうとするものである。平成29年度と平成30年度の研究分担者による活動から、権力の共有状態を踏まえてあらためて確認される主権概念の実態は、権力に関わった人間集団の多様性に応じて多元的であったことがヨーロッパ各地の事例をもって実証されつつあり、人口に膾炙している近代主義的な主権理解を鋭く批判する視座が築かれつつある。加えて、本研究は歴史的ヨーロッパを構成した各地域における主権理解の実態について再検討することを目標のひとつとしているが、それは単に個別事例の集積を目指すものではない。本研究は、ヨーロッパ中心主義に基づいた従来の主権理解を批判する目的から、平成29年度以来、ユーラシア規模での視線に立った比較研究に求められる「補助線」も追求している。2018年度歴史学研究会大会合同シンポジウム「「主権国家」再考」などの平成30年度の研究活動を通じて、「礫岩のような国家」論でまとめられた当該地域内部における権力構造の複合的な実態を踏まえた主権理解は、対外関係の変化と連動させつつ検討することが、そうした比較研究に求められるべき「補助線」として肝要である点が確認されている。こうした「補助線」に基づきながら、ヨーロッパにおける主権理解を、日本や中国など、東ユーラシアにおける権力理解と適宜比較し、北西ユーラシアにおける権力概念として相対化することで、ヨーロッパ中心主義に基づいた従来の主権理解を刷新する道筋は自ずと開かれるだろう。本研究の方向性を明確にすることができた平成30年度のこれらの成果に鑑み、本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成29年度と平成30年度の研究成果を踏まえ、今後は以下の4点の方針に従って推進される。(1)本研究に参画する研究者は、平成29ー30年度と継続的に議論されてきた比較研究を成立させる「補助線」を意識しながら、各自が分担する地域を対象に主権概念の再検討を進める。(本研究に参画する研究者のなかで協議したうえで海外に派遣し、研究遂行上必要となる史料調査に加えて、令和元年度以降に開催する国際ワークショップにむけ関連する現地研究者と意見交換を行う。)(2)各々の研究者が進めている研究を持ち寄ることで、各々の研究の進捗を確認するとともに、そこから得られた新たな知見を本研究に参画する者が共有するために、令和元年夏と令和2年春に大阪ないし東京で研究会を開催する。(3)平成29-30年度の活動で得られた知見を歴史学ならびに隣接する人文学・社会科学分野に披瀝して学界に総合的な議論を喚起する目的から、日本西洋史学会や歴史学研究会大会などの場でで随時公開することを念頭に置きながら、上記(1)と(2)は進められるが、令和元年には先んじて歴史学研究会大会での公開を、日本西洋史学会については令和2年度以降の公開を目指す。(4)(3)で得られた外部の研究者からの意見を本研究にフィードバックさせながら、最終年度における論集の刊行を念頭に、本研究の精緻化を目指す。
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