研究課題/領域番号 |
17H00952
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松浦 好治 名古屋大学, 法学研究科, 特任教授 (40104830)
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研究分担者 |
竹中 要一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00324830)
佐野 智也 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (30419428)
中村 誠 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (50377438)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 比較法 / 漢字文化圏 / 法令語彙のオントロジー / 国際共同研究 / 法令翻訳辞書 |
研究実績の概要 |
(1)台湾法の法令用語をキーとして、中国、韓国、日本の対応用語を特定する作業を継続している。現在、作業を終えたのは、2200語である。(2)基本六法語彙の対応関係に関する法域間の比較検討のため、日本の六法の全条文をデータとして集め、情報処理によって辞書見出し用の法令用語候補を用意した。用語候補を手作業で検討し、憲法160、民法969、刑法393、民事訴訟法632、刑事訴訟法620の見出しを特定した。商法と会社法の法令用語の検討は、まもなく終了する。中国、韓国、台湾の六法の辞書見出し用の法令用語候補の解析を進めている。(3)精査後のデータについて、情報科学オントロジーの手法を使い、データの解析、法概念間の関係の表示など、より詳細な解析を2019年度に行う計画である。(4)基本六法語彙に関する研究成果は、法令翻訳に関する国際学会等で報告した。とりわけ、東アジア法域の法を比較検討する手法については、国際学会で中間的な報告を行った。(5)基本六法語彙の国際的な共有のためのウェブの概括仕様を確定し、開発作業は2019年度に行う。(6)日中韓台の若手研究者と共同で、法令用語の対応関係を検討する中で、4つの法域にとって重要な法的テーマのリストの作成作業を進めている。今年度は、民事訴訟制度の中で実質的な口頭弁論を実施していないのは、日本だけであることを確認できたので、中韓台でなぜ、法廷の中で実質的な口頭弁論が発展したのかについて、検討を進めている。(7)基本法ドメイン語彙に関する研究成果を参照しながら、東アジア法域標準対訳辞書の量的質的向上を図っている。(8) 比較のための多様な形態の資料のリストに基づき、資料開発を進める。成果の一部は、オーストラリアの学会で報告した。(9) 2018年度は、法令翻訳に関連する国際会議において、日本の取組、辞書の開発状況などについて、招待講演を数件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日中韓台の法令用語の語彙の対照作業は、毎月3回程度の頻度で研究会を継続している。処理した用語数は、計画の半分程度であり、2019年度に鋭意作業を進める。 日中韓台の六法語彙の辞書見出し語の洗い出し作業のノウハウは、日本の六法語彙の処理作業で確認できた。韓国の語彙はハングル表記であるがこれを機械翻訳する作業は、すでに経験があり、予備的な作業も済ませている。中国、台湾については、情報処理の結果を待って、作業を進める。作業結果のデータについて、情報科学オントロジーの手法を使って、データの解析、法概念間の関係の表示など、より詳細な解析を2019年度に行う計画である。 効果的な比較法を行うためには、語彙の対応表のほか、制度の比較を流れ図や構造図を使ってより効率的に把握する作業が不可欠である。どのような流れ図や構造図が有効であるかは、大学院で開講している東アジア比較法(英語講義)において、参加している大学院生などの協力を得て、試作を行っている。2018年にカナダのトロントで行ったアメリカ型の法学教育の成功条件に関する学会では、報告後の質疑応答やその後のメールのやり取りで比較の手法の有効性を確認することができた。2019年6月の学会では、その成果について、報告する予定である。 研究成果を公表するためのデータベースの仕様確定の作業は、予定よりも遅れており、2019年前半に行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果のとりまとめと公表の作業をすすめる。 (1)開発された基本六法語彙の国際的な共有のためのウェブを整備し、関係専門家による利用を開始し、情報の精査向上を進める。 (2)基本六法語彙については、完成したものを4つの法域で共有する。 (3)重要な法的テーマに関する語彙については、できるだけ多くのテーマをカバーするように努力し、完成したものについては4つの法域で共有できる形で提示する。 (4)比較のための多様な形態の資料のリストに基づいて、資料の開発を進め、完成したものについては4つの法域で共有できる形でウェブ上で提示する。 (5)基本六法語彙に関する研究成果と重要な法的テーマのドメイン語彙に関する研究成果を参照しながら、東アジア法域標準対訳辞書の量的質的向上を図る。 (6)まとめとなる国際研究会を組織し、成果の発表と成果の法域を越えた共有に努める。
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